早いところでは2月末日頃から開花を始める桜は、梅の花と共に古くから日本人に愛されており、現存する最古の歌集「万葉集」には梅と共に桜の歌がおよそ140首掲載されています。しかし、この当時は桜よりも梅の花に関する歌が多く、梅の花が100首ほどに対し、桜は40首ほどとなっています。
しかし、平安時代になり、紀貫之や壬生忠岑らによって撰された「古今和歌集」では、梅の花と桜を詠んだ歌の数が逆転しており、この頃から徐々に日本人は桜の魅力に魅入られてゆきます。
日本人を魅了する桜とお花見の起源
古来より多くの日本人たちから愛されている桜ですが、盛大に咲いたかと思ったら、たった2週間ほどで散ってしまうというとても儚い花でもあり、四季の移り変わりを繊細に感じとることができる日本人にとって桜はとても重要な風物となってゆきます。
先人たちは、開花期間の短さ・散り際の豪華さ・美麗で可憐な花々をしばしばヒトの生命の儚さになぞらえています。また、古来より桜にはヒトを狂わせる不思議な力があると言われており、梶井基次郎氏の短編小説「櫻の樹の下には」や坂口安吾氏の短編小説「桜の森の満開の下」などが挙げられます。
そんな、見る人によって印象を変化させる桜ですが、現在では不安や恐怖と言った感情よりも、幽雅で厳粛な印象を感じ取る方や素直に美しいと感じる方が多く、桜を見ると心が踊り、ウズウズする方も大勢いらっしゃいます。
特にこの時期限定のお花見は日本人だけではなく、海外の方々の間でも人気があり、今ではお花見が国際交流の場として用いられています。
さて、そんなお花見ですが、皆さんはいつ頃から始まったのかご存知ですか。
今回はお花見の歴史や起源についてご説明したいと思います。
お花見の歴史~起源~
お花見の歴史を語るうえで忘れてはいけないのが、日本に古くから伝わる神様に纏わるお話です。
日本には、およそ800万もの神様がおり、そのなかの1人「サ」神という山と田を司る神様がいます。サ神は現存する日本最古の歴史書「古事記」や日本最古の勅撰正史「日本書紀」が誕生するより前の時代から行われてきた「サ神信仰」に由来します。
日本が農耕民族だった頃、サ神様は田の神様としての役割も担っており、田植えが始まる頃になると山から里へ降りてきて、「クラ(神座)」と呼ばれる樹木を依り代にし、田植えが終わるころになると山へと帰ってゆくそうです。
古代の日本人は、サ神様の依り代となるクラの樹木を「サクラ」と呼び、その樹木の下にサ神様へのお供え物として山の幸や海の幸を用意し、豊作を祈願した後、そのお下がりを頂くというお祭りが行われていました。
今回はお花見の歴史を語るうえで忘れてはならない起源についてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
呪術的要素の強かった桜は、昔と今では印象が大きく違いますよね。
昔の方々が桜をどのように感じていたのかを感じることで、これから開花シーズンを迎える桜の観方が変化するかと思います。
是非、桜の歴史やお花見の起源を知り、先人たちの思いを感じとってみてはいかがでしょうか。