日本酒テイスティングにおける専門用語

プロの利き酒師や酒匠の方々が使用している利き酒用語とは?

日本酒をテイスティングする際、必ず必要になるのが「利き酒用語」です。
利き酒用語とは、日本酒の風味をシンプルかつ分かりやすく言葉にするためにもので、テイスティングを行う方にとっては、とても重要な用語となっています。

この用語は、日本酒に限ったことではなく、ワインやブランデーなどにも存在するものであり、例えば、ワインの風味を鑑定するソムリエの方々は、テイスティングワードと呼ばれる形式化された表現用語を組み合わせてワインの香りや味わいを巧みに表現しているのです。
さらに、このテイスティングワードは世界共通ワードであることも特徴です。
しかし、日本酒はワインなどのアルコール飲料とは異なり、味わいに対応した表現の体系が成立しておりません。
そのため、日本酒のテイスティングはお酒の中でも、非常に難しいと言われています。

さて、テイスティングが非常に難儀だと言われる日本酒ですが、プロの利き酒師や酒匠の方々の間で必ず使用されている利き酒用語というものは少なからず存在します。

そこで、今回は日本酒のテイスティングを行う際にプロの利き酒師や酒匠の方々が使用している利き酒用語をご紹介したいと思います。

日本酒テイスティング用語集

日本酒テイスティングを行う際に用いる利き酒用語「香り編」

では、まず利き酒用語の「香り」についてご紹介します。

【香りの特性用語】

調和 上立ち香と含みかのバランスが取れていること。
上立ち香 口に含む前に日本酒からふわりと立ち上がる香りのこと。
含み香 口に含んだときに感じる香りのこと。口中香とも言う。
ソフト おだやか・柔らか・軽快な香りを表す。
華やか 豊かで際立つ香りの際に用いる。
優雅 華やかさにプラスして、上品さと落ち着きのある香りを持つ日本酒に用いる。
個性的 原材料となるお米・酵母・製法などに由来する独特な香りのこと。

【香りの指数を表す用語】

不調和 上立ち香と含み香のバランスがとても悪いこと。
酸臭 酢酸・酪酸など揮発性有機酸に由来する臭いのこと。
つわり ダイアセチルに由来するチーズのような臭いのこと。ジアセチル臭とも言う。
木香様臭 アセトアルデヒドに由来する樽香様の匂い。樽香とも言う。
酢エチ臭 酢酸エチルに由来する刺激を伴いセメダインのような臭い。
濾過臭 濾過材に由来する紙のような臭い。紙臭とも言う。
生老香 生酒の劣化に伴い生成される匂い。1種の老ねた臭いのこと。

【香りに関する用語:その他】

はな 上立ち香の別称。口に含む前に日本酒から立ち上ってくる香りのこと。
引込み香 含み香や口中香の別称。日本酒を口に含んだ際に呼気と共に感じる香りのこと。
吟醸香 吟醸酒特有の香り。洋梨やリンゴなどに似た香りがする。
吟醸香が豊かな場合、華やかな香りと呼ばれ、さらに上品さと落ち着きのある香りの場合は「優雅」と表現される。
木香 樽酒から薫る香りのこと。
特にスギ材で作られた樽に貯蔵された日本酒から感じられる。
新酒ばな 絞ったばかりの新酒特有の香りのこと。「麹ばな」と呼ばれることもある。
加熱処理を行うと失われてしまいます。
老香 「熟し香」とも言う。
日本酒の熟度が進むと発生する香りであり、中国の老酒によく似た香りがすることからこの名が付いた。貯蔵期間が長く、貯蔵温度の高い場所で保管されていた日本酒から顕著に感じられる香り。

日本酒テイスティングを行う際に用いる利き酒用語「味わい編」

では、続きまして利き酒用語の「味わい」についてご紹介します。

【味わいの特性用語】

ふくらみ まろやかさと幅のある味わいのこと。⇔「うすい」の反対語
濃醇 まろやかさと幅のある味わいのこと。⇔「うすい」の反対語
軽快 軽やかで心地良い味わいのこと。
キレイ 澄んでおり、端麗な味わいのこと。
なめらか まろやかで調和の取れた味わいのこと。
後味良 飲み終わった際に余分な味が残らないキレの良い日本酒のこと。
適熟 荒さ、ダレ味、老ねの無い味わいのこと。

【味わいの指数を表す用語】

うすい やせており、物足りない味わいのこと。⇔「ふくらみ」の反対語。
くどい しつこく、上品さにかける味わいのこと。濃醇を過ぎた状態。
雑味 味が多過ぎるために汚くなり、上品さが感じられない状態。
酸うく 酸味のみが他の味からかけ離れている状態。
渋味 口の中に収れん感の残る味わいのこと。
苦み 苦みのみが他の味からかけ離れている状態。
味だれ 適熟を過ぎてしまい、締りが無く緩んだ味わいのこと。

【味わいに関する用語:その他】

濃い・淡い 濃い味わいを持つ日本酒は「ごくみがある」「コクがある」「濃醇」「濃い」「旨味がある」と表現し、一方、淡い味わいの日本酒は「淡麗」「きれい」「軽い」「スッキリ」などと表現するのが一般的。
しかし、薄過ぎる日本酒の場合は「水っぽい」「うすい」「味がさびしい」と表現される。
濃淡の度合いは、日本酒に含有されている糖分と酸に大きく関わっており、双方の含有量が多いと濃くなり、少なくなると淡くなる。
雑味 濃い味わいの日本酒で調和の取れたものは「ごくみがある」「コクがある」などと表現されますが、バランスが崩れており、嫌みが感じられるものは「雑味がある」「くどい」「重い」「きたない」などと表現する。
日本酒に雑味がある場合は濃淡に関係なく「ガラが悪い」「サバケが悪い」と表す。
後味 日本酒を飲んだ後、口の中に残っている味わいのこと。
酸味がしっかりしている場合は「ハネがある」「押し味がある」などと表現し、酸味が薄くて甘さが浮いていたり残ったりした場合は「だれた」「ぼけた」などで表します。
スッキリとした軽快さがある場合は「味のキレが良い」などと表現することも。
熟度 搾って時間の経っていない新酒の場合、口の中で刺激的な印象を受けます。これを「あらい」と呼び、逆に熟成が進み、あらさが取れて口当たりが良い日本酒を「まるい」と表現します。熟成が進み過ぎてしまった日本酒を過熟と呼び、「だれた」と表現します。

日本酒テイスティングを行う際に用いる利き酒用語「色調編」

最後に日本酒のテイスティング「色調」についてご紹介します。

【色に関する用語】

青ザエ 新酒の青みがかった淡い黄緑色の透明な日本酒の色を指す。
ザエ 別名「テリ」とも言う。透明度を表し、澄んで透明度の高い日本酒を「サエが良い」と言い、悪い日本酒を「サエが悪い」と表現します。

今回は日本酒のテイスティングの際に用いられる利き酒用語の一部をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

日本酒の香りや味わいは、飲み手によって大きく異なるため、甘口のお酒でも辛く感じたり、辛口のお酒を甘く感じる方もいらっしゃいます。
日本酒の香りや味わいには正解が無いので、どちらの感想も正しいことになります。

また、ご紹介した用語は一部ですので、他にも様々な利き酒用語は存在します。
もちろん、用語だけではなく、オリジナルのシンプルで分かりやすい表現があれば、そちらでも問題ありません。

嗅覚や味覚は十人十色ですので、そのことを理解しつつ、日本酒の香りや味わいを堪能して楽しいひとときを過ごしましょう。

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