日本酒の造り方|⑨上槽

日本酒造りもいよいよ最終局面です。
今まで、お米を磨いて高温の蒸気で蒸し、デンプンを糖分へと分解させる麹や糖分をアルコールに変換させる酵母を含む酒母造りを行ったりなど、数々の工程を経て、日本酒の基となる醪を仕込み、発酵させ、今まさに日本酒の原酒を造ろうという工程までやってきました。

日本酒の原酒を造るためには「上槽(じょうそう)」という工程を行う必要があります。
では、上槽とはどういった作業なのでしょうか。

日本酒造りの工程「上槽」について

上槽とは?

醪を造り、発酵させたら日本酒の原液となる液体と醪を絞った後に残る粕の2つに分ける必要があります。この作業を「上槽」と言います。
日本では、濾す作業を省いた日本酒の製造及び販売は酒税法で禁止されており、醪をギュッと絞ることで初めて日本酒と名乗ることが出来るのです。

上槽を行う日は決められておらず、醸造した醪の状態や成分の検査などを充分に行い、杜氏自身が納得の行く結果が現れた際に行います。

上槽の方法は酒蔵によって異なり、主に自動圧搾機・槽(ふね)・袋吊りの3つのうちのいずれかで行われます。

では、上槽の工程をご説明します。

充分に発酵された醪を用意します。このときの醪には日本酒の原酒となる液体部分と不要となる固形物の粕が混ざり合っています。

自動圧搾機を使用した場合、上部から醪を注ぎ入れ、空気の圧力でギュッと日本酒の原酒を絞り出すことが可能です。強力な圧によって絞り出されるため、安定しています。特に「ヤブタ」と呼ばれる手風琴のような圧搾機は人気が高く、多くの酒蔵で使用されています。

槽(そう)と呼ばれる方法で上槽を行う場合、舟の形状をした木製の容器に醪の入った酒袋を入れ、絞り始めは醪自身の重みで絞り、2度目はゆっくりと緩やかな圧を加えて絞ってゆきます。この方法は昔から行われている上槽であり、主に高級酒の上槽に用いられます。

袋吊りと呼ばれる方法で上槽を行う場合、醪が入っている酒袋を吊るし上げ、人為的な圧力を加えることなく、醪自身にかかる重力によって滴り落ちる雫を集める上槽方法です。他の2つの方法と比べ、時間がかかるため限定酒となる大吟醸や鑑評会に出品するなど最高級日本酒と呼ばれる銘柄を製造する際に使用されます。

最新鋭の上槽方法「遠心分離搾り」とは?

東京都台東区にある遠心分離機メーカーの「株式会社コクサン」では、秋田県にある総合食品研究センターの醸造試験場と共同開発し、平成17年に特許を取得した世界初の「吟醸もろみ上槽システム」を製造及び販売しています。

この最新鋭の上槽装置を使用している酒元は日本国内でも10社と普及率は低いですが、遠心力で上槽を行うため、原酒にかかる負担が極めて少なく、雫酒のような美しい日本酒を製造することが可能となっています。
また、「吟醸もろみ上槽システム」はステンレス製のため、日本酒独特の臭いが付きにくくなっています。さらに密閉容器でギュッと絞られるため、豊かな吟醸香を逃すことなく日本酒の中に閉じ込めることが可能となっており、常に同じ条件下で圧搾することが出来るので安定した品質の日本酒を供給することが出来ます。

しかし、遠心分離機の上槽装置は1台2000万円と高額なうえ、常に一定の圧搾を行うため、日本酒の搾り始めしか味わうことが出来ない「あらばしり」や「中取り」、「責め」を味わうことが出来ません。

あらばしり・中取り・責めとは?

充分に発酵させた醪を酒袋に入れ、日本酒の原液と酒粕に分ける上槽を行います。その際、絞り初め・途中部分・搾り終わりで全く異なる味わいを持つ日本酒を堪能することが出来ます。

上槽工程に移行してすぐ、酒袋から滴る液体を「あらばしり(荒走りまたは新走り)」と言います。圧を加えずとも醪自身にかかる重力によって流れ出る液体は淡く濁っており、アルコール度数は低めとなっています。野性的でキレの良い口当たりと華やかで新鮮な香りを持つ日本酒となっています。

あらばしりが終了すると、透明な日本酒が酒袋から流れ出てきます。この清酒を「中取り(中汲みまたは中垂れ)」と言います。中取りは緩やかな圧を加えて流れ出てきた日本酒であり、鑑評会などに出展される日本酒は、ほぼこの中取りの日本酒が出品されます。
中取りは、香り及び味わいの調和が絶妙となっており、日本酒の良い部分が詰まっていると言われています。

中取りが終了すると、今度は一気に圧を加えてギュッと絞り出します。
こうして絞られて流れ出た日本酒を「責め(後取りまたは攻め)」と言います。高級酒として知られる大吟醸などはこの部分を使用しません。他の2つと比べて、やや雑味がありますが、アルコール度数は他の2つと比べて高く、垢抜けて濃厚な味わいとどっしりとした飲みごたえのある日本酒となっています。

上槽は酒袋を絞るタイミングや方法、流れ出る原酒の頃合いなどによって日本酒に含有される成分が異なるため、杜氏の判断がとても重要になります。
また、上槽したばかりの日本酒はアミラーゼなどの活性酵素が含有されており、酵母も混在されていると言います。

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