日本酒を造る酒蔵の一日

日本酒を造る「酒蔵」の仕事~杜氏や蔵子のハードな1日~

節日の際の節供や還暦や婚礼などのお祝いの席に必ず用意される日本酒は、日本人にとって無くてはならない飲料の1つです。
しかし、私たちが「おいしい」と言って飲んでいる日本酒は、とっても繊細で手間暇のかかる飲み物なのです。

そこで、今回は日本酒を造る「酒蔵」の仕事内容や杜氏や蔵子のハードな1日をご紹介したいと思います。

夜明け前から始まる酒蔵のハードな一日

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酒蔵の仕事~1日の始まり~

酒蔵の仕事は、夜が明けぬ早朝5:30から始まります。そのため、当時や蔵子たちは5:30までに蔵へやってきて就業時刻までに準備を整えます。
日本酒は寒造りが基本のため、蔵の中にはヒト専用の暖房器具が一切ありません。そのため、蔵内は身体の芯まで凍えてしまいそうな寒さとなっています。さらに、杜氏や蔵子たちは力仕事を主体とする作業が多いため、厚着することが出来ず、寒いなか軽装で動き回っています。

酒蔵のお仕事~午前~

5:30から7:00の間に蒸米の準備を行います。ですが、お米が蒸し上がるまでにやらなければならないことがたくさんあります。

まず、蒸し釜に火が付けられるのが6:20頃なので、それまでに蒸米を冷ましてから麹室に運び込む「蒸米の引き込み」が始まるまでに、2日前の麹を麹蓋に盛り、3日目の麹蓋を積み替えて出麹を完了させなければなりません。
そして、午後に行う酒質検査の醪を専用のロートに入れ、仕込みの準備を行うなど緻密なスケジュールで仕事をしなくてはなりません。

6:20頃になり、蒸し釜が点火されると40分ほどで全体に蒸気が行き渡り、50分ほどでお米が蒸し上がります。
蒸している間に杜氏や蔵子たちは朝食を済ませ、蔵に戻ってくると、蔵内は真っ白な蒸気で包まれ、濃い霧のような状態となります。

蒸し上がったお米を専用のスコップを用いて木桶に入れ、計量されます。蒸米の蒸気と力仕事によって軽装の蔵子たちの額にはじわりと汗が滲んでいます。

計量後、さらしを敷いた台の上に広げられ、ほかほかの蒸米を冷まします。この作業は、酒蔵によって少々作業工程が異なりますので、詳しいご説明は控えさせて頂きます。

日本酒造りには、麹用・酒母造り用・仕込み用など蒸米は各工程で必ず使用され、さらに1つの蔵で数種類の日本酒を同時に醸造するため、精米歩合や品種の異なるお米を全て甑で蒸します。また、お米は全て仕切り布で区分けされており、下から低精白のお米・麹用・高精白のお米の順に置かれます。

蒸米の工程は8:00頃に蒸し上がるようになっており、10:00頃まで蒸米を仕込む作業が行われます。その後30分間の休憩をはさみ、10:30から12:00頃まで出麹と上槽の準備などを開始します。

杜氏は酒蔵の最高責任者として麹造りの麹屋・酒母造りの?屋・洗米と蒸米の釜屋・上槽の船頭など日本酒の各工程にその道のプロを配置し、蔵子たちと共に日本酒造りを行っています。

午前中はほぼ蒸米の仕込みとなっており、杜氏と麹屋は麹室に入り、次の工程へ移ります。一方、釜屋は甑の後片付けを始め、船頭と?屋はそれぞれ酒袋に醪を入れるなどの作業を行っていました。
もちろん、毎日同じ仕事をしているわけではありません。日によって作業が異なるため、杜氏をはじめ、4名の職人たちはそれぞれが責任分業体制で進められ、役割をきっちりこなすことで、最高の日本酒を造っているのです。

蔵元のお仕事~午後~

12:00から14:00まで酒蔵ではお昼ご飯と休憩をとります。
そして14:00から明日の蒸米に備えて洗米作業が開始されます。洗米と浸漬時間は秒単位で決められているため、脆いお米をいかに迅速かつ丁寧に進める必要があります。
また、精米歩合によってお米の吸水率も変化するので、洗米・浸漬の工程は非常に神経を使います。

蔵子たちが洗米と浸漬を行っている間、杜氏は蔵の一角にある検査室にて醪の成分検査を行います。この検査では、醪中のアミノ酸度や日本酒度などを計測し、現在の醪の状態をしっかりと理解しておくために必要な作業です。
日本酒の香りや味わいは杜氏の腕の見せ所であり、醪を絞るタイミングを見誤るとたいへんなことになります。なので、杜氏は毎日検査室に行き、酒質検査を行う必要があるのです。

日本酒の良さは、繊細で複雑な味わいを持つ日本伝統の酒です。蒸米・醪や麹の温度など全ての工程でこまめに数値を計測し、1本1本真心を込めて造られています。

14:00から15:00まで洗米や醪タンク替えを行い、30分ほど休息をとります。
15:30から17:00まで、釜内のお湯を捨て、新しい水を張り、甑をセットし、醪と酒母に櫂入れを行います。

酒蔵では、安全かつ安心な日本酒を提供するために常に蔵内を清潔に保っています。そのため、蔵内は土足厳禁となっており、専用の草履に履き替え作業を行っています。また、床は常に水洗いされ、塵1つ落ちていないピカピカな状態を維持しています。
酒造りに使用した道具類も使用した後は必ず熱湯で洗浄し、干します。そして、最後に釜の中に溜まっているお湯を抜いてホースで水を流しながらブラシでゴシゴシこすって綺麗に洗います。これは江戸時代の頃から続く酒蔵の伝統となっています。

明日に備えて蔵子たちが道具をピカピカにしている間も酵母や醪の発酵は進んでいます。
そのため、1日何度も櫂入れを行い、酒母や醪が均一になるようにかき混ぜます。一見とても簡単そうに見えますが、実はとても重労働なのです。
櫂入れを行っている蔵子たちは「櫂入れ唄」を口ずさみながら、櫂入れを行う時間や回数を計測し、眠気を吹き飛ばしています。

17:00から18:00になると、杜氏や蔵子たちは夕食をとります。
18:00以降は、麹の切り返しと仲仕事を行い、真夜中に麹蓋の積み替えを行い酒蔵の長い1日が終わります。

しかし、蔵によっては発酵タンクの見回りや夜中に数回行われる麹蓋の積み替えなどを行うため、日本酒造りが落ち着くおよそ5か月の間、日本各地の酒蔵は24時間眠らずに動いています。

今回は日本酒を造る「酒蔵」の仕事内容や杜氏や蔵子のハードな1日をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたか?
私たちが「おいしい」「うまい!」と言って飲んでいる日本酒がハードに製造されていることはあまり知られておりません。酒蔵のお仕事は毎日異なるため、今日はこれをやるというのが前日に判明していないため、臨機応変に動ける方でないとなかなか勤まりません。
この機会に酒蔵で働いている杜氏や蔵子たちの苦労を感じながら、グイッと1杯日本酒を嗜んでみてはいかがでしょうか。

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