日本酒の造り方|⑦仕込み

日本酒造りの工程「仕込み」について

製麹と酒母造りを経て、ようやく完成した日本酒の?「酒母」の内部では、乳酸によって守られている酵母が次々に増殖を始め、順調に発酵が行われます。
そして、数十日後にはようやく本格的な日本酒造りの工程「仕込み」へと移行することが可能となるのです。

そこで、今回は日本酒最大の要である「仕込み」とは、どういった作業なのか、どのような役割を担っているのかをご紹介します。

酒母を活性化させ増殖させる

仕込みとは?

仕込みとは、酒母に蒸米や麹、水を加えて醪(もろみ)を製造することです。
醪とは、日本酒を醸成し、酒の粕を濾す前の状態のことです。

仕込みは別名「醪造り」や「本仕込み」とも呼ばれ、酒蔵に代々伝わる諺「一麹 二? 三造り」の三造りにあたります。
一般的な日本酒の仕込みは、蒸米と麹、水の一揃いを3回に分けて行われる「三段仕込み」という方法で行われます。この一揃いが4回ならば「四段仕込み」5回ならば「五段仕込み」となります。

日本酒は糖化と発酵を同時に行う「並行複発酵」という製法で醸造されます。
並行複発酵とは、1つの巨大な密閉容器の中に麹の作り出す酵素の作用によってデンプンが糖分へと変換され、糖分を糧にして増殖を行う酵母の働きによってアルコールを生成する製法です。

並行複発酵で製造される日本酒は、様々な微生物の働きによって生成されるため、非常に複雑でデリケートなアルコール飲料です。そのため、日本酒を製造する際は、雑菌や野生酵母の影響を如何に受けずに造ることが出来るのかがポイントとなります。

日本酒造りに用いられる菌類は酸に強い性質を持っているため、仕込みを行う際も常に酸性を保つ必要があります。
しかし、仕込みに使用する麹や蒸米、水の3つは酸性ではありませんので、酸性である酒母の中にこれら3つの材料をいっぺんに投入してしまうと、酒母の酸性が薄まってしまいます。すると、空気中を漂う雑菌や野生酵母が入り込んでしまい、不安定な香りや味わいを持つ日本酒が誕生してしまいます。

この作用に気付いた江戸時代の杜氏や蔵子たちは、麹や蒸米、水の一揃いを3回に分けて加えることで常に酒母の酸性を保つことを編み出し、安全に醪を製造することが出来るようになったのです。現在でも先人たちの知識は受け継がれており、仕込みの際は必ず3回に分けて麹や蒸米、水を加えています。

仕込みの工程

では、仕込みがどのように行われているのか三段仕込みを例に挙げてご紹介します。

仕込み1日目に行われる工程を「初添え」と言います。
まず、仕込みを開始する1時間から3時間前に仕込みを行うタンクに酒母と麹、水を投入し、水麹を造ります。そこへ、蒸米を加えます。初添えの役割は、完成した酒母に含まれる眠った状態の酵母の目を覚まさせ、活発に増殖させることです。
初添えの際に使用する酒母は製造した量の6%から7%、麹や水、蒸米は酒母のおよそ2倍の量となっています。

仕込み2日目に行われる工程を「踊り」と言います。
眠った酵母の目を覚まさせるために、この日1日は何もしません。
酵母が活発になり、順調に増殖を始めるのをじっくり待ちます。

仕込み3日目に行われる工程を「仲添え」と言います。
1日休ませたことで醪の中で順調に増殖を始めた酵母に仲添え用の麹や水、蒸米を投入します。このとき加える一揃いの量は、初日に加えたときのおよそ2倍の量を使用します。

仕込み最終日となる4日目に行われる工程を「留添え」と言います。
仕込み最後の工程となる留添えでは、留添え用の麹と水、蒸米を前日の仲添えで加えた一揃いのおよそ2倍の量を投入します。

留添えの後に蒸米を糖化させ4度目の仕込みを行った場合は四段仕込みとなり、甘口の酒質を持った日本酒となります。5度目の仕込みを行った場合は五段仕込みと呼ばれますが、酒母に含まれる酵母は3度目の仕込みを行った際、自身の生成するアルコールによって死滅してしまうため、仕込み回数を増やして糖分を加えたとしてもアルコールを生み出す酵母がいないため、あまり意味がないと言われています。

今回は酒母造りの後に行われる仕込みについてご説明させて頂きました。
実は仕込みの後に完成した醪を発酵させる工程が待っています。次回、仕込みの後半戦である「発酵」をご紹介したいと思います。

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