日本酒の造り方|②洗米・浸漬

日本酒の造り方の工程「洗米」と「浸漬」について

日本で古くから行われている日本酒造りについて以前簡単にご説明させて頂きました。

日本酒を製造するには、まず所轄の税務署へ足を運び、酒類製造免許を申請する必要があります。見事取得することが出来たら、日本酒造りに取り掛かることが出来るようになるのですが、素人が日本酒造りを1から始めるのはとても大変なことです。しかし、現在活躍している杜氏さん方がどのように日本酒を造っているのかというのは気になりますよね。

そこで、今回は日本酒造りで欠かすことの出来ない工程の1つ「洗米」と「浸漬」について詳しくご説明したいと思います。

白米を洗い、水を吸わせる

枯らしと洗米とは?

日本酒の製造工程ですが、まず日本酒の原材料となるお米を精米するところから始まります。精米を醸造したい日本酒の既定の精米歩合まで磨き上げたら、洗米工程に移ります。

洗米とは、文字通り「精米されたお米を洗うこと」です。
私たちも炊飯器でお米を炊く前にお米の表面に付着した汚れを取り除くために洗米しますが、日本酒造りの際に行われる洗米は、細心の注意を払い行う必要があります。

ですが、洗米工程を行う前に「枯らし」という工程を行う必要があります。
磨き上げた精米は摩擦によって熱が溜まっており、精米内の水分量が急激に失われている状態となります。この状態で精米を水に漬けてしまうと、お米がひび割れてしまったり、洗米及び浸漬工程の際に水分の吸収率にムラが生じてしまいます。
そのため、磨き上げた精米は暗くて涼しい場所で2週間から3週間ほど寝かせる「枯らし」という工程が必要不可欠なのです。

しかし、枯らしの工程を経ても、磨き上げられた精米は繊細ですので、取り扱う際は注意が必要となります。

枯らしの工程が完了すると洗米工程に移行します。
日本酒造りに使用する精米は外側の表皮の大部分が磨き落とされているため、非常に割れやすい状態となっています。そのため、優しく丁寧かつ迅速に洗米する必要があるのです。
また、磨き落とされた分お米は水分を吸収しやすくなっているので、素早く作業を進める必要があります。
そのため、洗米作業ではお米の表面に付着した糠を如何に素早く洗い流し、お米が余分な水分を吸収してベタつかないよう、如何にスピーディーかつ繊細に扱うことが出来るのかがポイントとなっています。

浸漬とは?

洗米工程では、精米の表面に付着した汚れや糠を取り払い、さらにお米を強化する働きがあります。では浸漬とはどういった役割を持つ工程なのでしょうか。

洗米工程の1つに含まれている「浸漬(しんせき)」は、熟練の職人さんでも非常に神経を使う工程だと言われています。

浸漬は、精米を蒸すために必要な水分をお米に吸収させるための工程です。
洗米されたお米を浸漬することによって、酵素や酸の働きによってデンプンなどの高分子量の炭水化物を分解させ、低分子量の糖類へと変化させる糖化を促進させるよう理想的な環境を創り上げる目的で行われます。

浸水に使用する水温ですが、一般的に10度から15度となっており、浸漬させる時間は蒸米吸収率という数式を用いて算出されます。計算式は以下の通りです。

『蒸米吸収率(%)=(浸漬完了後の精米重量(kg)-精米重量(g))÷精米重量(kg)×100』

例えば、精米歩合35%の酒造好適米「山田錦」を洗米するとします。山田錦は9分ほどで目的の水分量に到達してしまうため、それ以上水分を吸収させないように配慮する必要があります。水分を吸収し過ぎたお米は加吸水状態となり、質の良い蒸米にすることが出来なくなってしまいます。

精米歩合が0%に近い高精白米であるほど、水分の吸収速度が速く、さらにお米の品種によって浸漬時間が異なります。
そのため、事前に吸水テストを行い、理想的な水分量になるよう水温や室温などの環境要因を調節またはチェックしておき、ストップウォッチなどで計測することを「限定吸水」と呼びます。
限定吸水は絶対に失敗することが出来ないため、常に神経を集中させて行う必要があります。

浸漬工程が終了したら、浸漬タンクから水を抜き取る「水切り」を行い、次の「蒸米」工程に移行します。

日本酒を製造する工程の「洗米」と「浸漬」についてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
日本酒の香りや味わいを左右する精米を如何に迅速かつ丁寧に次の工程に進めるかがこの工程のポイントとなります。そのため、杜氏さん方が常に神経をすり減らしながら作業に当たっています。
これはまだまだ序盤の工程ですが、まだまだ難所は残っておりますので、如何に杜氏の仕事が大変かをご理解頂けるかと思います。

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