日本伝統酒である日本酒といえば、「親父臭い」「飲みにくい」「二日酔いが心配」など様々な理由から国内での需要が低迷しつつあります。
しかし、海外ではワインと同様に食前酒として飲用されたり、健康や美容に絶大な効果を発揮するため海外セレブたちの間で話題となっているアルコール飲料となっています。
また、日本酒の持つ独特な香りや味わいは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など数々の賞を受賞している俳優兼映画監督でもあるロバート・デ・ニーロ氏を虜にし、さらに世界各国で活躍している日本人シェフのノブ・マツヒサ氏をも魅了しています。
ノブ・マツヒサ氏自身が運営しているレストランでは、厳選された日本酒を絶品料理と共に提供しており、アメリカのニューヨーク州にある「Nobu New York」では、新潟県の北雪酒造で醸造された大吟醸を提供しており、トム・クルーズ氏やスピルバーグ氏、ジョルジオ・アルマーニ氏にマドンナ氏など数々の著名人たちは、ノブ・マツヒサ氏の絶品料理に舌鼓を打ちつつ、日本人の知識と技術力によって誕生した日本酒を嗜んでいると言います。
そんな海外のセレブたちから親しまれている日本酒ですが、どのように醸造されているのか皆さんご存知ですか?
今回は先人たちの知恵と技術を結集させて誕生した日本酒の造り方についてご説明したいと思います。
日本酒の造り方とは?
日本酒とは、ワインやなどと同じ醸造酒です。
醸造酒には、単発酵製法・複発酵製法・並行複発酵の3種類存在し、日本酒は並行複発酵で製造されます。
では、並行複発酵で製造される日本酒の造り方をご紹介します。
①精米 | 籾殻を取り除いたばかりの玄米を精米し、白米にします。 |
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②洗米・浸漬 | 精米が完了した白米は「洗米及び浸漬」工程に移行します。まず、白米を磨き上げ、付着した糠を綺麗に洗い流し、淀みの無い美しい水に漬け込み水分を吸収させます。 |
③蒸米 | 「洗米及び浸漬」を完了したら、「蒸米」工程に移ります。お米を蒸すことによって日本酒造りに必要不可欠な麹菌の繁殖しやすい環境を整え、醪の中で溶けやすくなると言われています。 |
④3つに分けて放冷 | 蒸したお米を麹米と掛米、酒母米に分け、それぞれの用途に合わせて放冷作業を行います。 |
⑤製麹 | 分けた蒸米の一方を広々とした台の上に広げ、糖化酵素と呼ばれる麹菌を植え、およそ2日間かけて徹底管理された室内でじっくりと麹を製造します。 |
⑥酒母 | 酒母用に放冷を行った蒸米に水と麹に酵母、そして乳酸を加え、酒母を製造します。日本酒造りには質の良い酵母が豊富に必要になります。 |
⑦仕込み(醪造り) | 酒母の内部では酵母が増殖し、発酵が行われます。そこへ、水と麹、さらに蒸米を追加投入します。これを数回に分けて行い、日本酒の仕込みを開始します。この工程を「醪造り」と言い、しっかり発酵させる必要があります。 ※仕込みには3段仕込みや5段仕込み、本醸造などが存在します。 |
⑧搾り | およそ1か月後、しっかり熟成されているのを確認したら、醪をギュッと絞り、酒を取り出します。この工程を「搾り」と呼び、このとき絞られた日本酒を「新酒」と言います。 |
⑨おり引き | 絞られた新酒の不純物を取り除くため、眠らせて上澄みと沈殿物とに分けます。 |
⑩濾過 | 上澄みを濾過します。 |
⑪火入れ・貯蔵 | 濾過後、加熱処理を施し、温度及び湿度が徹底管理された室内で貯蔵します。 |
⑫調合・割り水 | 日本酒の種類によって仕込み水を加えます。 |
⑬瓶詰め・火入れ | 瓶詰めを行います。このとき、同時に加熱処理を行います。 |
⑭ラベル貼り | ラベルを貼り、封をしたら完成です。 |
ここまでが一般的な日本酒の造り方となります。
日本酒の発酵に関する不思議
日本酒は他のアルコール飲料と違い独自の発酵を始めます。
日本酒は前述しましたが、並行複発酵製法で醸造されるため、使用する酵母がアルコールを生成するには2倍の量の糖分が必要となります。
しかし、1度に大量の糖分を与えても酵母の発酵は正常に行われません。その理由は、糖の濃度が高過ぎてしまうと酵母が糖を分解する能力が低下してしまうからです。
醪のアルコール分20%というのは、アミラーゼという麹の酵素がお米に含まれるデンプンを少量ずつブドウ糖に糖化させ、そのブドウ糖を酵母がアルコールを生成しやすい環境に保てるように配慮した結果であり、糖化と発酵の調和が取れた状態で進行するため、並行複発酵製法と呼ばれています。
また、お米に含有されているタンパク質が発酵を妨害する物質を吸い付け、麹に含まれるプロテオリピッドという脂質タンパク質の化合物が酵母のアルコール耐性を強化しているため、たっぷりとアルコールが生成されるのです。
日本酒といえば、6度から15度の低温でじっくりと醸造されるのが特徴でもあります。これを低温発酵と呼び、アルコールによる酵母への働きを穏やかにすることが出来ます。
醪の発酵温度は酒類によって異なります。
他にも仕込む水の量なども酒類によって異なり、日本酒は原材料の穀類に対して120%と高濃度仕込みとなっており、その他の酒類の中には500%となっているものもあります。
日本では古来より日本酒が製造されてきました。そして、様々な酒造家たちの手によって改良に改良を重ね、現在の製法を確立させたのです。
日本酒は独特な香りと味わいを有するため、苦手な方も多いですが、先人たちの知識と技術力を集結させた素晴らしいお酒ですので、この機会に是非1度日本酒を嗜んでみてはいかがでしょうか。