日本酒の造り方|⑥酵母とは

日本酒造りで欠かすことの出来ない「酵母」ですが、皆さんは酵母がどのようなものなのかをご存知ですか?

酵母とは、アルコール発酵を行う際に必要となる菌類の1種であり、円形または楕円形の形状をした微細な単細胞です。酒類の製造だけではなく、「イースト」という名でパンの製造にも使用されています。

この酵母には様々な種類があり、自治体や研究機関などで開発及び販売しているものや日本醸造協会が販売しているものがあります。
また、酵母は日本酒の香りや味わいを決定付ける重要な役割を担っているため、酵母選びは重要となります。

では、日本醸造協会で販売されている酵母と自治体や研究機関で販売されている酵母の違いをご紹介したいと思います。

酒母造りに使用される酵母とは?

酵母の種類

明治39年の1月設立された日本醸造協会は、現在東京都北区滝野川に所在しています。
主に日本酒の品評会や酒造講習会の開催、協会酵母の販売などを行っており、醸造に関する技術研究や醸造業の発展のために活動しています。

日本醸造協会から販売されている酵母は「協会系酵母」と呼ばれ、泡あり酵母に属する「6号・7号・9号・10号・11号・14号」と泡なし酵母に属する「601号・701号・901号・1001号・1401号・1501号」別途契約が必要となる酵母「1801号・1601号・1701号・No28・No77・KArg7・9・10号」などの3種類存在します。

最も人気の高い協会系酵母は「真澄酵母」と呼ばれる7号系統や「熊本酵母」と呼ばれる9号系統であり、特に9号系統は日本酒の風味がまとまりやすく、香りも良く出るため、吟醸酒などの高級酒に使用されています。

自治体や研究機関から販売されている酵母には、静岡酵母や長野アルプス酵母、秋田流華酵母、山形AK-1などが挙げられます。また、東京農大短期大学部の醸造学科で教授を務めていた田中氏によって誕生した向日葵や撫子などの花から酵母を分離させた花酵母も花酵母研究会から販売されています。

また、中には自家製の酵母を使用して醸造を行っている酒蔵もあり、現在では日本各地で酵母の開発が行われています。

しかし、専門の期間で厳重に品質管理が行われている日本醸造協会の酵母は、常に安定した品質の酵母を提供しているためとても人気があります。

酵母と吟醸香の関係性

酒母造りを行う際に必ず必要となる酵母ですが、使用する酵母によって出来上がる日本酒の香りや味わいが大きく異なります。
日本酒には華やかで瑞々しいリンゴや梨、バナナのようなフルーティーな芳香性を漂わせるものがあります。この香りは「吟醸香」と呼ばれ、日本酒独特の香りとなっています。
吟醸香は精米歩合によって濃度が異なり、心白に近ければ近いほど強い吟醸香を持つ日本酒となります。

酵母は麹菌がデンプンを分解して生成する糖分を糧にアルコールを作り出します。しかし、質の良い日本酒を製造するためには時間をかけてゆっくりと糖化させる必要があります。そのため、酵母はお腹いっぱい糖分を食べることが出来ず、さらに精米歩合が高いお米を使用することで麹菌が分解するデンプン量も少ないため酵母に多大なストレスがかかります。
すると酵母の代謝に変化が生じ、エステル類のフルーティーな香りを生成するのです。

近年では、日本醸造協会から高エステル生成酵母の1801号や1701号、リンゴ酸高生産性多酸酵母のNo28やNo77、花酵母によって強力な芳香性を持つ酵母の開発も行われています。

今後酵母の種類は増加する可能性があります。ですので、酵母による日本酒の香りや味わいの変化を楽しむのも一興かもしれませんね。

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