日本酒火入れによる味わいと香りの違い

滓引きや濾過の工程が完了し、次に行われるのが「火入れ」になります。

日本酒の火入れとは「低温加熱殺菌」のことを指します。
通常、日本酒は出荷されるまでに2度火入れを行います。
これは日本酒内に残っている酵素の働きを停止させ、お酒の香りや味わいに異常をきたす火落ち菌などの悪性の乳酸菌を殺菌させるためです。
しかし、火入れを行うことによって日本酒の清新な香味が失われるため、火入れを行わないで出荷をする場合もあり、酒蔵では目指す日本酒の香りや味わいによって火入れを行う回数やタイミングを変更させ、同じ銘柄でも異なる香味を持ったお酒が誕生します。

そこで、今回は火入れによる日本酒の香りや味わいの違いをご説明します。

火入れと生酒

日本酒には、生酒(本生)・生貯蔵酒・生詰め酒・火入れの4種類存在します。
通常、日本酒は滓引きや濾過を終えた後に1度目の火入れを行います。そして、貯蔵用の専用タンクに移され、秋口まで大切に保管されます。そして、瓶詰を行う前後に2度目の火入れが行われ、出荷されます。

ですが、中には火入れを一切行わずに貯蔵される「生酒(本生)」や貯蔵後に火入れを行う「生貯蔵酒」、貯蔵前に火入れを行う「生詰め酒」の3タイプ存在します。

生酒(本生)

火入れを一切行わない日本酒を「生酒(本生)」と言います。
日本酒の清新な味わいを心行くまで堪能することができる最もフレッシュなお酒となっています。
生酒を味わってみたいという方は御代櫻醸造の「御代櫻 本生純米 H26BY」はいかがでしょうか。岐阜県産の「あさひの夢」を100%使用した純米タイプの本生酒は、しっかりとしたお米の旨味が感じられるやや辛口淡麗タイプの日本酒です。
すっきりとした爽快な後味が堪りません。酒質はとてもバランスの良いまとまった味わいとなっていますので、食事のお供にもぴったりです。

生貯蔵酒

貯蔵前の火入れを行わず、瓶詰め前後に火入れを行う日本酒を「生貯蔵酒」と言います。
火入れをせずに貯蔵されるため、熟成感が感じられるお酒となります。
フレッシュ感は生酒よりもやや劣ります。
生貯蔵酒を飲んでみたいという方は、白鶴酒造株式会社の「上撰 白鶴 生貯蔵酒」または「上撰 白鶴 ねじ栓生貯蔵酒」はいかがでしょうか。
生貯蔵酒が誕生する以前の昭和50年頃は日本酒といえば燗酒が定番でした。しかし、白鶴では夏でもおいしい日本酒を味わってほしいという想いから生貯蔵酒が誕生したのです。
生貯蔵酒は、生の状態で低温貯蔵されるため、清新な香りと味わいに加え、穏やかで丸みのある旨味を持ったお酒となります。さらに、生の状態で貯蔵すると発生する異臭「ムレ香」の発生を抑えるために、限外濾過技術を採用し、不快なにおいを防いでいるので、最後までおいしく召し上がることができます。

生詰め酒

貯蔵前に火入れを1度行うが、瓶詰めの際に行われる2度目の火入れ工程を省いた日本酒を「生詰め酒」と言います。
貯蔵前に火入れを行うため、「生」と付く日本酒の中では最も清新感が低く、落ち着いた香味を持つお酒となります。

生詰め酒を飲んでみたいという方は、鳳鳴酒造の「鳳鳴 田舎酒 生詰原酒」はいかがでしょうか。田舎酒の原酒なので、コクと押しの強さはありますが、火入れと比べると、香りの強さはピカイチです。気になる味わいは、甘みの後に混じり気の無い濃厚な旨味がやってくるので冷酒やロックで嗜むことをオススメします。

今回は火入れによる日本酒の香りや味わいの違いについてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
火入れを行うことで、日本酒の品質が向上し、安定した香味を堪能することができるのですが、火入れを行わないことで得られるフレッシュ感は「生」と付くお酒でしか味わうことができません。
今まで火入れの日本酒のみを飲まれてきた方は、是非この機会に「生」の日本酒を味わってみてはいかがでしょうか。きっと日本酒の新たな魅力を発見することができるかと思います。

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