【日本酒の香りと味わいについて】お米の違い
酵母によって、日本酒の香りや味わいに違いが生じることをご説明しましたが、日本酒は酵母以外にもお米や水、麹菌など様々な要素が加わって、個性豊かなお酒となります。
しかし、酵母も麹菌も日本酒の基となる「お米」が無ければ、その個性をキラリと光らせることができません。
今回は、そんな日本酒の個性を際立たせることができる原材料「お米」についてご説明したいと思います。
日本酒の香りと味わいに変化を与える酒米の違いについて
以前、日本各地で生産されている日本酒の原材料「酒造好適米」についてご説明させて頂きましたが、実はこの酒造好適米の生産地や品種、精米歩合などによって日本酒の仕上がりが大きく異なるのです。
酒造好適米といえば、「酒米の王様」と称される山田錦をはじめ、美山錦や五百万石が酒米トップ3と言われており、最も多くの酒蔵で使用されています。
それでは、酒米トップ3の特徴をまとめてご紹介したいと思います。
・山田錦:スッキリとした味わいの日本酒になる。
・美山錦:穏やかで優しい味わいの日本酒となる。
・五百万石:ふっくらとした豊かな味わいの日本酒となる。
このようにお米にはそれぞれの特徴があり、酒蔵ではどのような日本酒造りを行うのか、仕込み水との相性はどうなのかなどをしっかり考慮したうえで使用する酒米を選択する必要があるのです。
お米は精米歩合が高い方がおいしいの?
日本酒造りでは、玄米の表面を削り、残った精米部分の割合を精米歩合と言います。
この精米歩合の数値が低ければ低いほど、雑味の少ないスッキリとした味わいの日本酒となり、数値が高いとぽってりとした旨味を持つ複雑な味わいの日本酒となります。
よく、お米は磨けば磨くほどおいしいと言いますが、本当なのでしょうか。
確かにお米は一定数まで磨き上げることで酒質が向上すると言われています。
そのため、精米歩合70%と50%では香りや味わいに大きな差が生じます。
しかし、精米歩合40%と25%ではいかがでしょうか。
実はお米は40%ほど削ったあたりから、それ以上磨き上げてもお米に含有されているタンパク質や脂質に大きな差が生じないため、精米歩合25%だからと言っておいしいとは限らないのです。
山田錦と五百万石の香りや味わいの違いをご紹介
静岡県にある三和酒造では、山田錦や五百万石など様々な酒造好適米を使用した「臥龍梅」という銘柄を販売しています。
そこで、兵庫県産の山田錦を100%使用した「純米吟醸 無濾過原酒 臥龍梅」と富山県産の五百万石を100%使用した「純米吟醸 無濾過原酒 臥龍梅」の違いをご紹介します。
※どちらも協会10号系の酵母を使用しています。
山田錦を使用した臥龍梅
兵庫県産の山田錦を55%まで磨き上げた「純米吟醸 無濾過原酒 臥龍梅」は、山田錦の持ち味であるスッキリとしたキレのある日本酒となります。
しかし、どっしりとした重厚感のあるふくよかな香りとしっかりとした甘みも持ち合わせているため、非常に調和の取れた上品なお酒となっています。
純米吟醸 無濾過原酒 臥龍梅の中で1番の辛口と言えるでしょう。
五百万石を使用した臥龍梅
富山県産の五百万石を55%まで磨き上げた「純米吟醸 無濾過原酒 臥龍梅」は、五百万石の持ち味であるふっくらとした豊かな味わいを活かしたお酒となっています。
山田錦とは異なり、華やかな香りが漂うお酒となっており、飲み始めは穏やかで優しい香りがするのですが、飲み進めるうちに華やかな香りへと変化するため、日本酒通の方にオススメの1本です。甘みは控えめですが、ほどよい辛味とのバランスが良いので飽きのこない堅実な日本酒と言えます。
今回は日本酒造りに使用されるお米の違いによって生じる香りや味わいの変化をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
お米は日本酒造りに必要な原材料です。そのため、各地にある酒蔵では自身が造りたいお酒になるように酵母や麹菌と共にお米にもこだわっています。
普段何気なく飲んでいた日本酒ですが、これからはお米にこだわって日本酒を購入してみてはいかがでしょうか。