【日本酒の香りや味わいについて】仕込みの違い
麹や酒母が完成すると、いよいよ本格的な日本酒造り「仕込み」が開始されます。
仕込みとは、酒母に麹や水、蒸し米を加えて「醪(もろみ)」を造る工程のことを指します。
日本酒は、ワインなどとは異なり、糖化と発酵を同時に行う並行複発酵にて造られるお酒です。
並行複発酵とは、ひとつの巨大なタンクを用意し、その中に酒母を入れ、麹や蒸し米、水を加え、お米のタンパク質を麹の働きによって糖分へと分解させ、その糖分を糧とする酵母の働きによってアルコールを生成させる手法です。
この独特な発酵方法は、江戸時代の頃から行われており、日本酒独自の仕込み法として「三段仕込み」と呼ばれています。
しかし、現在では各酒蔵にて、三段仕込みではなく、四段や五段など仕込み回数を変えたり、仕込みの原材料や容器をタンクから木桶へと変更するなど、日本酒の香りや味わいに特徴を持たせて、新しいお酒を続々と生み出しています。
そこで、今回は、仕込みによって日本酒の香りや味わいにどのような違いが出るのかご紹介したいと思います。
仕込みによる日本酒の違いとは
日本酒の仕込みは江戸時代から続く「三段仕込み」がポピュラーなのですが、中には四段仕込みや五段仕込みと仕込み回数が異なる日本酒も数多くございます。
そこで、三段仕込み・四段仕込み・五段仕込みによる日本酒の香りや味わいに関する違いをご紹介します。
仕込回数による違い
【三段仕込み】
現在販売されているほとんどの日本酒は昔ながらの三段仕込みによって造られています。
各酒蔵によって香りや味わいが異なり、最も安定した日本酒と言えます。
【四段仕込み】
三段仕込みが完了し、落ち着きを取り戻した醪に、再び麹や蒸し米、糯米などを加えて仕込みを行うことを四段仕込みと言います。
三段仕込みと比べ、発酵によって分解されずに残ってしまった糖分が醪の中に含まれているため、甘口の日本酒となります。
菊水酒造株式会社では、「菊水の四段仕込」を販売しており、さらりとした柔らかな甘みとちょっぴり洒落ていて上品な香りがクセになるお酒です。
日本酒初心者の方でも安心して飲めるので、夫婦で晩酌をしたり、友人と鍋料理を楽しむ際にオススメです。
【五段仕込み】
四段仕込みの上を行く五段仕込みも甘口タイプの日本酒となります。
五段仕込みを是非味わってみたいという方は、梅乃宿酒造の「梅乃宿 生もと純米 奈良流五段仕込 無濾過生原酒」はいかがでしょうか。
ほんのりとした甘さと爽快な香りを持っており、ひと口嗜むとしっかりとしたボディのある味わいと五段仕込みらしい甘みが口の中に広まり、最後に辛味もやってくるという絶妙なバランスが堪りません。
ふくよかな旨味も持っているので、和洋折衷どのような料理にも合わせることができます。
特に豚の角煮などのコッテリとした濃い味の料理との相性抜群です。
では、続きまして、仕込みに使用する原材料による香りや味わいの違いはあるのかをご紹介します。
原材料による違い
【水⇒清酒】
仕込みの原材料は、酒母に麹・蒸し米・水を使用しますが、水の代わりに清酒を使用することで、とろ~りとした甘みとコクを持つ日本酒が誕生します。
このお酒を「貴醸酒(きじょうしゅ)」と呼び、別名「大人のデザート酒」と言われています。
貴醸酒は、基本的には仕込みの際の水を全て日本酒に変更して仕込むのが一般的ですが、現在では留添えの際に使用される水を日本酒と入れ替えて醸造されることが多いようです。
貴醸酒は、琥珀色をした美しいお酒であり、とろ~りとしたとろみが特徴です。味わいは濃厚で甘いため、食後酒として用いられています。
貴醸酒は平安時代に製造されていたお酒の製法を基に誕生した日本酒なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
貴醸酒といえば、榎酒造株式会社の「華鳩」が有名ですね!
是非、興味を持たれた方は「華鳩」シリーズをクリスマスやバレンタインデーなどのイベントの際に1つ購入し、大切な女性と楽しいひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
【全麹】
日本酒を仕込む際、通常ならば完成した米麹と蒸し米を2:8もしくは2.5:7.5の割合で行うのですが、ラベルに「全麹仕込」と表記されている場合、全量の米麹を使用したことを記しています。
しかし、全麹仕込は手間暇が掛かり、コストパフォーマンスも低いため、ほとんどの酒蔵ではこの方法で日本酒を醸造することはありません。
しかし、製造方法によって旨味成分であるアミノ酸などが通常の3倍ほど濃くなるため、通常の日本酒よりも旨味がギュッと凝縮されたおいしいお酒が誕生するため、全麹仕込みにこだわる酒蔵もございます。
ですが、なかなか御目にかかる機会がありませんので、全麹仕込みの日本酒をこっそりご紹介したいと思います。
岩手県にある南部美人株式会社の「南部美人 All Koji2013 全麹純米仕込み」がオススメです。是非、その違いを貴方の五感を使って感じて頂きたいと思います。
最後に仕込みを行う際に使用する容器の違いによって生じる日本酒の香りや味わいをご紹介します。
仕込に使用するように来よる違い
【木桶仕込み】
日本酒は古くから木桶で醸造が行われてきたのですが、昭和20年から30年代の高度成長時代の頃に登場したホーローや合成樹脂の金属タンクの登場にとって、木桶で日本酒を仕込む酒蔵が徐々に減少してしまいました。
その理由は、木桶仕込みはタンクと比べ、非常に世話が掛かり、手間暇がかかるため、大量に生産することが出来なかったからです。
しかし、タンクでは表現することができない独特な香りや味わいを生むことができるため、現在でも木桶仕込みにこだわっている酒蔵もございます。
木桶仕込みの魅力は、原材料と桶の添い方や仕込み方法の違いなどによって同じお酒でも全く異なる魅力を持つ日本酒が誕生する点です。
木桶仕込みの日本酒を飲んでみたいという方は、枡一市村酒造場の「HAKKIN 純米酒山廃桶仕込み」はいかがでしょうか。信州の幻の酒造好適米「金紋錦」を100%使用したお酒は、半世紀の時を超えて復活を果たした日本酒です。
是非、この機会にお試しください。
いかがでしたでしょうか。
日本酒は仕込みの回数や原材料、そして仕込む際の容器によって香りや味わいが大きく変化します。日本酒を購入される方は、ラベルに記されている細やかな部分にまで目を配り、このお酒はどのように仕込まれたのかを考えながら購入すると、ご自身に合ったお酒を見つけることができるので、日本酒初心者の方は是非ラベルをしっかり観察してみましょう。