関西地方兵庫県の酒造好適米①

関西地方の酒造好適米をご紹介【兵庫県その1】

近江逢坂関以西の地・関西地方は、京都府・大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県の2府4県から構成されています。また、福井県や三重県、鳥取県に徳島県を加えた2府8県を関西地方と呼ぶ場合もあります。

元々日本では東京都を中心とした地域を関東と呼んでいましたが、関西という名は存在しませんでした。その理由は、元来朝廷のおられる都が日本の中心地であり、東も無ければ西も無かったからです。ですが、平安時代になり、越前愛発関が撤廃され、代わりに近江国逢坂関が設置されることになり、関西と呼ばれるようになったのです。

そんな関西地方には、老舗の酒蔵が数多く存在します。中でも近畿地方北西部に位置する兵庫県は今やスイーツの街やオシャレな街として多くの美しく可愛らしい女性が集まる街として有名ですが、日本酒の街としても有名です。
今回は、兵庫県で生産されている酒造好適米を4回に分けて種類や品種、特徴などをご紹介してゆきたいと思います。

兵庫県で現在生産されている酒造好適米は以下の通りです。

兵庫県
五百万石・山田錦・愛山・いにしえの舞・白菊・新山田穂1号・神力・たかね錦・但馬強力・杜氏の夢・野条穂・白鶴錦・兵庫北錦・兵庫恋錦・兵庫錦・兵庫夢錦・フクノハナ・辨慶・山田穂・渡船2号(合計20種類)

兵庫県はなんと米処として有名な新潟県を凌駕するほど豊富なオリジナル酒造好適米が存在します。ですが、幾つか他の地方でご紹介した酒造好適米も含まれておりますので、そちらは省かせて頂き、今回初めて登場する酒米のみご紹介してゆきたいと思います。

兵庫県の酒米4種

愛山

愛山は、山雄67と愛船117の交配によって誕生した種類の酒米です。山雄67は山田錦と雄町の交配種のため、愛山は山田錦よりも勝る千粒重と心白発現率を有している醸造にたいへん適した品種です。しかし、心白が非常に大きいが故に高精白を行うと粉砕しやすく、溶けやすいため、雑味が出やすくなります。しかし、杜氏や蔵子の腕次第で絶品の日本酒を醸造することが出来るため、近年需要が高まっている酒造好適米となっています。
愛山の生産量ですが、兵庫県の加東郡社町周辺でしか育成されていないため、収穫量も低く、貴重な酒米となっています。

愛山を100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は立山酒造の「立山 特別純米酒 愛山 酒中仙」がオススメです。貴重な愛山を100%使用した特別純米酒ですので、かすかに薫る柔和な香りと程よい酸味と甘み、そして旨味が絶妙なバランスで口の中に広まります。この清酒は透明な暗黄色の飴色の琥珀のような水色をしているのですが、これは愛山の魅力を最大限引き出すために濾過を抑えて醸造されているので、このような色彩となっております。

兵庫北錦

兵庫県南部を中心に生産されている山田錦に対し、但馬及び丹波地方の栽培に特化した酒造好適米が兵庫北錦です。兵庫北錦はなだひかりと五百万石の交配品種であり、短稈なため耐倒性が高く、さらに耐病性にも優れています。しかし、耐冷性が低いため新しい朱オズ好適米の登場によって、生産量が減少しつつあります。米粒のサイズは大きく、心白の出現率も高いので酒造適性は高いと言えます。

兵庫北錦を100%使用した日本酒を嗜みたいという方は、ヤエガキ酒造の「八重垣 純米 兵庫北錦」がオススメです。2011年の秋に発売された新しい日本酒なので、ご存知無い方も多いのではないでしょうか。「八重垣 純米 兵庫北錦」は清々しいスッキリした瑞々しい味わいときりりと身が引き締まるような切れ味を持つ辛口純米酒であり、後味に十分なコクが感じられる清酒となっています。雄町のジューシーな味わいと山田錦のキレの良さを兼ね揃えているので、日本酒通の方にもオススメの1品です。

いにしえの舞

いにしえの舞は、明治時代の品種・早大関に兵庫夢錦を交配させて誕生した酒造好適米です。形状は半紡錘をしており、やや長い米粒となっています。心白の発現率は40%とやや低く、香りや無臭もしくは微かに感じられる程度なのが特徴です。日本酒造りに適していないように思われますが、精米の際に粉砕しやすい早大関のデメリットを克服しており、タンパク質の含有量が低いため意外と人気があります。

いにしえの舞を100%使用した日本酒を是非飲んでみたいという方は、大関株式会社の「大関 灘の生一本」がオススメです。大関株式会社オリジナルのいにしえの舞を100%使用した日本酒となっており、程よい甘みと酸味が上手く混ざり合い、お酒の芳醇な香りとお米のコクが感じられます。やや濃醇でほどよい甘口タイプの日本酒ですので、お酒好きな女性にオススメです。

山田穂と新山田穂1号

山田穂とは、山田錦の母として有名ですが、詳しい来歴が一切不明な酒造好適米です。
兵庫県が大正時代に日本の在来種である山田穂の純系淘汰することで誕生した品種であり、正式名称は「新山田穂1号」と言います。
1963年頃まで兵庫県では一般的に生産されていたのですが、山田錦の誕生によって徐々に生産量が激減してしまいました。山田錦は母である山田穂よりも、粒のサイズや心白発現率、含有成分などが勝っており、淘汰されるのは自然の摂理だったと言えます。
しかし、山田穂によって優れた種が誕生したのも事実であり、山田穂は素晴らしい酒米だと言われています。

山田穂・新山田穂1号を100%味わいたいという方は、白鶴酒造の「白鶴 超特撰 山田穂」がオススメです。「原点がここにある」という謳い文句は伊達じゃないというのが味わうことで良く分かります。2009年から2010年の2年連続でモンドセレクション最高金賞を受賞するほど素晴らしい日本酒であり、華やかで上品な香りと深い味わいが特徴の純米大吟醸を是非この機会に味わってみてはいかがでしょうか。

今回は兵庫県で生産されておりオリジナル酒造好適米をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだ兵庫県には数多くのオリジナル酒造好適米が存在しますので、1つずつご紹介してゆきたいと思います。

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