中国地方広島県の酒造好適米

中国地方の酒造好適米をご紹介【広島県】

中国地方とは、本州五大地方の1つです。関西地方の隣に位置し、広島県・岡山県・島根県・鳥取県・山口県の5県を合わせた総称です。
中国地方と呼ばれるようになった所以は今のところはっきりとは解明されておりませんが、一説によると、過去に畿内を中心に令制国を近国・中国・遠国の3つに区分した際、現在の5県が中国に属していたからではないかと言われています。現在では中国地方とは言わず、日本海側の県を山陰、瀬戸内海側の県を山陽と呼び、合わせて山陰山陽地方と呼びます。

中国地方は山陰と山陽とでは風土が大きく異なり、山陰地方は冬になると豪雪地帯になる日本海気候、山陽地方は1年を通して雨量が少なく、一部の地域では梅雨の時期になると暖湿気流の影響で大雨が降る瀬戸内気候となっています。

特に広島県は豊かな土壌で育成される良質な酒米と温かく穏やかな気候によって独特な香りと味わいを持つ日本酒が醸造されています。広島県のお酒を語る上で忘れてはならないのは、安芸津町の三津出身の三浦仙三郎氏によって編み出された軟水醸造製法です。この製法で醸される日本酒は柔らかな舌触りと香り高い酒の香気が漂う旨味に富んだ独特の清酒となります。

そこで、今回は広島県で生産されているオリジナル酒造好適米をご紹介したいと思います。
広島県で生産されている酒造好適米は以下の通りです。

広島県
雄町・こいおまち・千本錦・八反・八反1号・山田錦(合計6種類)

今回は岡山県オリジナル酒米の雄町や兵庫県のオリジナル酒米山田錦以外の4種類の酒造好適米の品種や特徴をご紹介したいと思います。

中国地方の酒米四種+番外編

千本錦

千本錦とは、「酒米の王様」という異名を持つ山田錦と広島県の風土に適した中生新千本の交配によって誕生した品種です。
広島県では、千本錦が誕生する以前、八反系や雄町系の酒造好適米が積極的に生産されていたのですが、双方日本酒造りに重要な心白は大きいのですが、高精白が困難だったため、今までは兵庫県のオリジナル酒造好適米の山田錦を使用していたのですが、どうしても高精白可能な広島県オリジナルの酒米を使って広島県の地酒を完成させたいという思いから千本錦が誕生しました。
こうして誕生した千本錦は、粒のサイズが大きくて心白の発現率も高く、心白はライン状に現れるため、高精白可能となっています。また、タンパク質の含有量がやや低いのが特徴です。善本錦を醸造すると程よいスピードで糖化が始まり、麹造りに時間がかかるので、豊かな吟醸香とスッキリとした味わいを持つ清酒となります。

千本錦を100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は、相原酒造の「雨後の月 千本錦 純米吟醸 ひやおろし」がオススメです。
山田錦にも劣らぬ千本錦を50%まで磨き上げ、癖の無い淡麗なボディとエレガントで柔らかな味わいを持つ清酒となっており、食中酒として愉しめるように醸造されているので、料理との相性も抜群です。ブドウのような瑞々しい甘めの香りと微かに感じる甘い味わいは日本酒が苦手な方でも美味しく召し上がることが出来ます。

八反

広島県の酒米の起源とも言われる八反は、八反草と呼ばれる品種のお米から誕生した酒造好適米です。現在八反系の酒米は、八反錦や八反錦1号・2号、八反35号などがありますが、これら八反系は全て八反草を起源としています。
八反草は江戸時代の終わり頃に民間の育種家によって酒米の品種改良が行われ、1875年に八反草が誕生し、育種されました。しかし、時代の流れと共に八反草は姿を消してしまったのです。その後、八反草を親に持つ八反10号と秀峰の交配によって八反35号が誕生したのです。八反35号は八反という愛称で親しまれており、今では「八反」の名で生産されています。粒も心白も大きいため、高精白に適しており、酒造適性に優れた酒米と言えます。

八反を100%使用した日本酒を嗜みたいという方は、藤井酒造の「龍勢 冷やおろし 八反35号 純米吟醸原酒」がオススメです。八反35号を60%まで磨き上げ、堅実とした奥深い味わいとキレの良さを兼ね揃えているため、飲み飽きしない清酒となっています。また、涼やかな酸味があるので、1度飲んだら高確率でリピーターになると言われています。

【番外編】八反草

八反系の起源と言われる八反草は酒造好適米ではありませんが、2001年に遺伝子源の収集を生業としている広島県農業ジーンバンクにて八反草の種籾を譲り受けた今田酒造本店は契約栽培の農家の方と共に八反草の栽培を開始しました。そして3年後の2004年に広島県の高田郡農業協同組合の方々の協力もあり、八反草の生産が本格的に行われるようになったのです。八反草はとても小さな米粒ですが、高精白に耐えることができ、清々しい爽快感溢れる日本酒となっています。

八反草を100%使用した日本酒は今田酒造本店のみとなっており、「富久長 純吟 八反草ALL もみじ酵母仕込槽しぼり無濾過本生原酒」「富久長 純吟 八反草ALL 1801 槽しぼり無濾過火入れ原酒」がオススメです。八反系の起源とされる八反草を100%使用した日本酒を是非1度堪能してみてはいかがでしょうか。

こいおまち

改良雄町とニホンマサリの交配種であるこいおまちは、広島県の象徴である「鯉」と大勢の人々から恋い焦がれる存在となるようにという想いから命名された広島県のオリジナル酒造好適米です。こいおまちは、改良雄町の耐倒伏性を強化し、早熟化を図るために開発された品種です。改良雄町よりも粒が大きく、心白の発現率が高いこと、そして心白のサイズが若干大きいのが特徴です。改良雄町よりも香り高い日本酒の香りがし、雑味も少ない良質な清酒として認知されています。

こいおまちを100%使用した日本酒を飲みたいという方は、酒田酒造の「上喜元 純米吟醸 こいおまち 無濾過生原酒」がオススメです。グラスに注ぎ、鼻を近付けると穏やかな上立ち香がし、一口含むと、雄町系特有のどっしり感はあまり感じられず、非常にバランスの良い清酒となっていますので、雄町系の中でも比較的飲みやすい部類になります。無濾過生原酒らしい躍動的で力強さを感じさせる深い味わいを持っているのですが、後味はすっきりとしたクリアで後からお米の甘みがふんわりとやってきますので、冷たく冷やしておき、火照った体をクールダウンするのに最適です。

八反錦1号

昭和48年に広島県にある農業試験場にて八反35号とアキツホを交配させて誕生した八反錦1号は広島県オリジナルの酒造好適米として有名です。八反錦1号には妹分にあたる八反錦2号がおり、双方共にアキツホの耐倒伏性や多収性、大粒良質性などを受け継いでおり、八反35号の欠点を補うことに成功した品種です。
八反錦1号と2号では若干の違いがあり、1号は耐倒伏性や耐冷性が八反35号よりも優れているのですが、いもち病に弱い一面があります。一方、2号は耐倒伏性が1号よりも優れており、標高400m付近での栽培に適しています。双方昭和58年に広島県の奨励品種として制定されており、心白は鮮明で大きく、発現率が高めなど優れた酒造適性を有しています。

八反錦1号を100%の日本酒を飲んでみたい方は、(株)天寶一の「天寶一 純米吟醸 特別栽培米八反錦 ひやおろし」がオススメです。秋季限定の日本酒となっており、秋の味覚をふんだんに使用した和食との相性が抜群なお酒となっています。
「特別栽培」という言葉が気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特別栽培とは、酒米生産者の協力によって減農薬で有機肥料を豊富に使用した酒造好適米のことであり、今回ご紹介させて頂いた「天寶一 純米吟醸 特別栽培米八反錦 ひやおろし」に使用されている酒米・八反錦1号は、自然志向の方にオススメの日本酒となっています。懐かしい稲わらのような香りが漂い食欲をそそります。また、しっかりした旨味を持っていながら、軽やかな味わいとなっていますので、秋らしい酒と言えます。

今回は広島県のオリジナル酒造好適米をご紹介させて頂きましたがいかがでしたか?
その土地ならではの酒米を知ることで、より地酒が美味しく感じられるかと思います。
この機会に広島県の地酒を味わってみてはいかがでしょうか。

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