関西地方の酒造好適米【兵庫県 その3】
兵庫県で生産されている酒造好適米についてご紹介します。今回で兵庫県の酒米紹介も3回目となりましたが、これでようやく半分となりました。今回は杜氏の夢・兵庫恋錦・フクノハナの3種類の酒造好適米をご紹介したいと思います。
兵庫県の酒米3種
杜氏の夢
兵庫県の北部で生産されている兵庫北錦と秋田県のオリジナル酒造好適米である吟の精を交配させたことで誕生した雑種1代目を葯培養し、育成された品種で、長い歳月をかけて遂に2004年8月に品種登録された兵庫県の新しい酒造好適米です。
杜氏の夢は、吟の精の優れた耐冷性を受け継いでいます。また、葉いもち病への耐性も高く、さらに心白発現率の高さや千粒重も大きいので酒造りに適したお米と言われています。当時の夢は、心白のサイズが小から中の間であり、尚且つライン状に現れるため、高度の精米に適している品種です。そのため、どっしりとした濃い旨味を持つ日本酒を醸造することが可能です。
杜氏の夢を100％使用した日本酒を飲んでみたいという方は、神戸大学が企画した「神戸の香 純米大吟醸酒」がオススメです。杜氏の夢は、兵庫県農林水産技術センターと神戸大学農学部が手を取り合って開発した酒造好適米であり、神戸大学農学部附属食資源教育センターにて安全管理が厳重に行われた場所で杜氏の夢を育成させ、1839年創業の老舗酒蔵の富久錦が兵庫県の豊かな自然が生み出す素晴らしい原材料と先人たちの技術や知恵を用いて、1つ1つ真心を込めて丁寧に醸造された日本酒です。神戸の香は、華やかな香気と味わいが楽しめる清酒ですので、是非興味を持たれた方は1度味わってみてはいかがでしょうか。
兵庫恋錦
兵庫県には、兵庫恋錦・兵庫北錦・兵庫夢錦の3つの錦があり、これらは「兵庫3大錦」と呼ばれ親しまれています。
兵庫恋錦は、酒米の王者と呼ばれる山田錦とIM-106の交配種で、主に兵庫県の吉川町を中心に生産されています。穂いもち病への耐性は低いですが、耐倒伏性が高いのが特徴です。
兵庫恋錦は山田錦よりも大きな粒であり、心白の発現率も高く、サイズも大きいので酒造りに適したお米です。
しかし、タンパク質の含有量が高く、お米自体が柔らかくて繊細なため、仕込みを行う際は非常に高度な技術が必要となります。また、洗米や醪の温度管理などにも気を付ける必要があり、たいへん手間暇のかかる酒米として有名です。
兵庫恋錦は老舗酒蔵の菊正宗酒造が主に使用しており、今まで培ってきた優れた技術と知識を生かし、醸造が難しいと言われる兵庫恋錦を100％使用した清酒造りを行っています。
兵庫恋錦を100％使用した日本酒を飲んでみたいという方は、菊正宗酒造の「菊正宗 兵庫恋錦 特別純米酒原酒」がオススメです。この日本酒は2013年の12月末に限定販売したのですが、購入者の方々から「再販してほしい！」という要望が多数寄せられ、2014年も数量限定で販売された日本酒です。菊正宗酒造だからこそ醸造することが出来たと言われる幻の日本酒であり、加水を一切していないので、高いパンチ力を持った日本酒となっています。普段飲んでいるお酒に物足りなさを感じていらっしゃる方は是非1度菊正宗酒造の「菊正宗 兵庫恋錦 特別純米酒原酒」を飲んで頂きたいと思います。
フクノハナ
フクノハナは秋田県にある東北農試で、奥羽237号と東北76号を交配させて誕生した品種です。フクノハナは昭和40年から10年間、日本各地で生産されていたのですが、今では兵庫県の出石町のみで生産されている稀少な酒造好適米となっています。
フクノハナは、耐倒伏性や葉いもち病に強く、さらに高い耐冷性を有しているのですが、当時の酒造好適米は栽培が難しいうえに生産量も少ないことから徐々に栽培が行われなくなりました。
また、フクノハナは米粒のサイズがやや大きめで心白の発現率も良好なのですが、高精白を行うと割れやすい、雑味の要因となるタンパク質の含有量の高さ、そして麹にすることが非常に難しいという欠点があったため、兵庫県では昭和60年頃にフクノハナの生産を中止することになったのです。
しかし、出石町は今後もフクノハナの生産を続けてゆきたいという熱い想いが地元の酒蔵の方々に届き、昭和63年に地元の酒蔵との契約栽培が行われるようになったのです。
フクノハナを100％使用した日本酒を味わってみたいという方は、石川県金沢市にある酒造会社の福光屋で醸造及び販売が行われている「コウノトリの贈り物」がオススメです。
冬鳥として大陸から稀にやってくるコウノトリが飛来する街として有名な兵庫県豊岡市で生産されているフクノハナを精米歩合70％で磨き上げた純米酒です。一口含んだだけで、ゆったりとしたおおらかな味わいとフクノハナ独特の旨味が口内に広まり、心がポカポカ温まるような幸せな気持ちにさせてくれる不思議な日本酒です。出産祝いや内祝いなどおめでたいときの贈り物として最適な日本酒として人気があります。
今回は兵庫県オリジナルの酒造好適米3種類をご紹介させて頂きましたがいかがでしたでしょうか。兵庫県で生産されているオリジナル酒米も残すところあと2種類となりました。
いったいどのような酒造好適米が登場するのでしょうか。ワクワクしますね！