関東地方の酒造好適米③

関東地方の酒造好適米をご紹介【その3】

関東地方で生産されている酒造好適米もいよいよ残すところ3つとなりました。
まだご紹介していない酒米は、茨城県のひたち錦・渡舟、そして栃木県のとちぎ酒14です。

今回、関東地方の神奈川県で栽培されている酒米は、群馬県や茨城県同様若水や「酒米の王様」山田錦の2種類だけですので、ご紹介を省かせて頂きました。また、東京都では酒米自体が生産されておりませんので、省かせて頂きましたので、合わせてお詫び申し上げます。

では、改めまして茨城県と栃木県で栽培されている酒造好適米をご紹介致します。

関東地方の酒米3つ

ひたち錦

茨城県初の酒造好適米「ひたち錦」は、茨城県農業総合センター生物工学研究所が長い時間をかけてようやく誕生させた様々な品種の酒米から、農業研究所で行われた奨励品種決定試験を見事通過し、栽培方法を確立させた初めての最優良品種です。
米粒のサイズが大きく、麹菌が破精込みやすい心白を有しており、さらに雑味の素となるタンパク質の含有量の低さなどから非常に酒米に適していると言えます。

ひたち錦を100%味わいたいという方は、森島酒造株式会社の「大観 ひたち錦 純米吟醸 無濾過 生原酒」がオススメです。茨城県産のひたち錦を55%まで磨き上げ、2種類の酵母を使用しているので、優雅でふくよかな吟醸香が感じられる美しく透明感の高い旨味が特徴の日本酒です。キレが良く程よい酸味があるため、表示されている日本酒度よりもやや辛口に感じられるかもしれません。原酒ならではのパンチ力が抑えられているので、食中酒として人気があります。

とちぎ酒14

栃木県オリジナルの酒造好適米である「とちぎ酒14」は、1996年に信交酒480号と関東177号の交配品種です。栃木県は今まで五百万石を中心におよそ60haの作付が行われてきたのですが、全て奨励品種ではないため、栃木県内にある蔵元は県外産の酒造好適米を仕入れて醸造を行ってきました。そんな中、栃木県酒造組合から栃木県オリジナルの日本酒を製造することを目標に純米酒向けの酒造好適米の開発を行ってほしいという強い要望があり、長い歳月をかけて遂に完成したのが、このとちぎ酒14です。
とちぎ酒14の特徴は、雑味の要因となるタンパク質の含有量の低さであり、出来上がった清酒は、とてもクリアですっきりとした味わいを持っています。

とちぎ酒14を100%味わいたい方は、松井酒造店の「松の寿 純米 とちぎ酒14 生酒」がオススメです。穏やかな香りと軽やかで心地良い味わいが特徴の日本酒となっています。比較的飲みやすい清酒ですので、初めて日本酒を嗜む方でもサラサラ飲めるのではないでしょうか。

渡舟

茨城県で栽培されている渡舟ですが、正式名称は「滋賀渡舟」と言います。明治28年に開設された滋賀県農事試験場(現在の農業技術振興センター)にて福岡県産の渡舟に品種試験が施され、純系分離によって「滋賀渡舟2号」や「滋賀渡舟4号」などが育成され、その後滋賀県の奨励品種として昭和34年頃まで湖南地方で盛んに生産が行われていました。しかし、優良品種が続々と誕生するようになり、いつしか滋賀渡舟は栽培されなくなり、文献上に残る幻の酒米となったのです。渡舟は山田錦の親品種にあたる酒米であり、さらにカリフォルニア米の起源ではないかと言われています。
渡舟が再び脚光を浴びるようになったきっかけは、JAグリーン近江酒米部会から東近江農業改良普及センターへ渡舟を作りたいという要望があったからです。譲り受けた当初たった50gだった渡舟は、平成18年度には生産量が21トンとなり、日本酒の醸造が行えるまでになりました。

茨城県のオリジナル酒造好適米ではありませんが、茨城県産の渡舟を100%使用した日本酒を嗜みたいという方は、府中誉株式会社の「府中誉 渡舟 純米大吟醸」がオススメです。心地よい吟醸香がふわりと立ち上がり、口に含むと酸味と甘みが絶妙なバランスで舌を刺激し、渡舟の持つ旨味が色濃く感じられる日本酒となっています。食事と共に飲用するよりも渡舟だけを味わうのがオススメです。

今回は栃木県と茨城県で生産されている3つの酒造好適米をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。他にも他県同様「酒米の王」と称される山田錦や五百万石、美山錦なども栽培されています。ですが、その土地ならではの地酒を味わうのでしたら、やはりその土地ならではの酒米を使用した日本酒が一番ではないでしょうか。

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