関東地方の酒造好適米をご紹介【その2】
関東地方で生産が行われている酒造好適米ですが、前回【舞風・若水・総の舞・玉栄】の4種類をご紹介させて頂きました。
今回は、【ひとごこち・夢山水・さけ武蔵・ひたち錦・渡舟・とちぎ酒14】をまとめて解説させて頂きます。
関東地方酒米4つ
ひとごこち
長野県農事試験場にて、信交酒437号と信交444号を交配させ誕生した酒米が「ひとごこち」です。ひとごこちは、美山錦よりも米粒のサイズが大きいこと、心白の発現がはっきりしていること、そして、栽培及び生産性に優れていることから非常に酒造適性が高く、たとえ50%まで搗精したとしても、美山錦よりも淡麗かつ幅のある清酒に仕上げることが出来るという特徴を有しています。そのため、ひとごこちを使用している蔵元によってはひとごこちを「新美山錦」という名でラベルに表記している場合があります。
長野県オリジナルの酒造好適米ですが、現在では山梨県や栃木県などでも栽培が行われています。
山梨県で生産されているひとごこちを100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は、山梨銘醸株式会社の「けい康」がオススメです。山梨県の契約農家の方が丹精込めて栽培したひとごこちを57%まで磨き上げ、軽やかで心地良い滑らかさを持つ清酒に仕上がっています。爽やかな吟醸香を引き出すために徹底的に管理された状態でじっくり長期低温発酵を行っているため、華やかさはありませんが、決して地味では無い純米吟醸となっています。
夢山水
山田錦と中部44号の交配品種である「夢山水」は、愛知県のオリジナル酒造好適米として2001年に登録されました。稲熱病の耐性が高く、酒造適応にも優れているため、現在では山梨県でも栽培が行われています。
愛知県のオリジナル酒造好適米ですので、山梨県オリジナルとは言えませんが、山梨県産の夢山水を100%使用した日本酒造りを行っている山梨銘醸株式会社の「絹の味」はInternational SAKE Challenge2014で見事銀賞を獲得した世界的にも有名な日本酒です。山梨県産の夢山水を47%まで磨き上げたその香りや味わいは、大吟醸特有の芳醇な香りと清々しく爽快感のある舌触りが癖になります。控えめな風味となっているため、食中酒として人気の高い清酒となっています。
【番外編】紫黒米
近年健康志向の方々が増加傾向にあり、食生活や生活習慣を見直す方々も増えており、有色素米の紫黒米「朝紫」の栽培が日本国内で広まりつつあります。
山梨県も例外ではなく、雑穀ごはんなどに使用するために積極的に栽培が行われています。水稲もち玄米ですので、酒造好適米ではありませんが、現在醸造元の桃川株式会社から紫黒米を使用した「紫三人娘」という銘柄の日本酒が販売されています。古代米として知られる紫黒米にはビタミンEやビタミンB1・B2、亜鉛、鉄、ナイアシン、アントシアニンなど美容と健康に絶大な効果を発揮する成分がぎっしり含有されており、女性を中心にじわじわと人気を集めています。
吟のさと
晩生型の種類に属する酒造好適米の「吟のさと」は稈が短いため耐倒性に優れており、九州地方での栽培に特化した酒米です。
吟のさとは、1996年に九州農業試験場水田利用部(現在の九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点)にて、多収かつ優良品種の酒造適応米を誕生させるべく、山田錦と西海222号を交配させて生まれた九州オリジナル酒造好適米です。山田錦の特徴を色濃く受け継いでおり、タンパク質含有量及び吸収性に優れています。
九州オリジナルの酒米ですが、山梨県でも栽培が行われており、山梨県産の吟のさとを100%使用した日本酒を九州産の日本酒と飲み比べてみたいという方は、萬屋醸造店の「春鶯囀 特別純米酒 富士川」は吟のさとを60%まで磨いた舌触りが柔らかく、サラサラ飲める日本酒です。軽快かつ爽やかな喉越しが癖になること間違いなしです。40度ほどに温めた「ぬる燗」で嗜むとまた違った味わいが楽しめるため、飽きのこない日本酒となっています。
さけ武蔵
埼玉県オリジナル酒造好適米「さけ武蔵」は、12年という長い歳月をかけてようやく誕生した酒米で、埼玉県にある多くの蔵元はこの時を今か今かと待ち望んでいたことでしょう。
さけ武蔵は、埼玉県の熊谷市を中心に栽培が行われており、改良八反流と若水の交配種です。
さけ武蔵は、米粒のサイズが大きく、心白もぎっしりと詰まっているので、非常に酒造適応の高い種類の酒米と言われています。
埼玉県のオリジナル酒造好適米「さけ武蔵」を100%使用した絶品日本酒を味わいたいという方は、武蔵鶴酒造株式会社の「さけ武蔵 純米吟醸酒」や小江戸鏡山酒造株式会社の「さけ武蔵大吟醸」がオススメです。特に「さけ武蔵大吟醸」は、埼玉県オリジナルの酒米を100%使用した世界初の大吟醸として知られており、ふくよかでエレガントな吟醸香が漂う日本酒となっています。味わいの方は、香り高くしっかりとした飲みごたえを持ったフルボディーな風味を舌でガツンと感じることが出来る清酒です。
今回は山梨県と埼玉県を中心に生産されている酒造好適米をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。山梨県では様々な都道府県の酒米を栽培しており、今後山梨県オリジナルの酒米が現れることが期待されています。そのときは是非、この場をお借りしてご紹介したいと思います。