九州地方の酒造好適米

九州地方とは、西海道にある筑前・筑後・肥前・肥後・豊前・豊後・日向・大隅・薩摩の9つの国の総称です。現在は、福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県の7県で構成されています。

九州地方は、農業や漁業、林業が盛んであり、温暖な気候の筑紫平野ではお米や大麦、小麦の二毛作が行われており、宮崎平野ではビニールハウスを用いて野菜の促成栽培が行われています。さらに、熱帯及び亜熱帯地域原産のさつまいもやマンゴー、バナナなどの生産も行われており、稲作に不向きな鹿児島県や宮崎県では畜産業が盛んに行われています。
比較的温暖な気候を有する九州ですが、お米を原材料とする日本酒よりも特産のさつまいもや大麦などを用いた酒類の生産量及び消費量がスバ抜けて高くなっています。

ですが、九州地方には絶品の日本酒が数多く存在しますので、今回は九州地方オリジナルの酒造好適米を使用したオススメの日本酒と使用されている酒米の種類や品種、特徴を合わせてご紹介したいと思います。

九州地方で生産されている酒造好適米をまとめてみました。

福岡県
山田錦・雄町・吟のさと・五百万石・壽限無(合計5種類)

佐賀県
西海134号・さがの華・山田錦(合計3種類)

長崎県
山田錦(合計1種類)

熊本県
山田錦・吟のさと・神力(合計3種類)

大分県
雄町・五百万石・山田錦・若水(合計4種類)

宮崎県
はなかぐら・山田錦(合計2種類)

今回は九州地方のオリジナル酒造好適米福岡県の「壽限無」と佐賀県の「さがの華・西海134号」、宮崎県の「はなかぐら」の4種類をご紹介したいと思います。

九州地方の酒米四種+番外編

壽限無

福岡県のオリジナル酒造好適米である壽限無とは、目野酒造が地元の農家の方々と共同で開発を行った酒造好適米です。酒米の王と呼ばれる山田錦と福岡県オリジナルの酒米・夢一献を交配させ、原肥減濃というこだわりの育成方法で生産されている些細な点にまで気を配って栽培されている酒米です。

壽限無100%使用した日本酒を是非飲んでみたいという方は、目野酒造の「国の寿 純米吟醸酒 壽限無」がオススメです。地元で愛される日本酒造りにこだわった目野酒造らしい芳醇ですっきり爽快な味わいを持つ清酒となっています。使用されている酵母も自社培養の吟醸酵母を使用しているので、福岡県の魅力がたっぷり詰まった清酒となっています。やや淡麗で若干辛口の日本酒ですので、甘口がお好みの方はご注意ください。

壽限無を使用した日本酒ですが、若波酒造合名会社の「若波 純米吟醸 壽限無 生酒」もオススメです。こちらは甘酸っぱい香りがふわりと薫る清酒となっており、杏や梅のような膨らみのある甘酸っぱさが口の中に広がり、深みのあるボディが印象的です。しかし、2口目には飲み始めのような渋みのある酸味が感じられなくなり、軽やかな甘酸っぱさが広まります。また、温度が高くなるとフルーツのような柔らかい味わいも仄かに感じることが出来ます。翌日になるとさらに香りと味わいが変化しており、1本で3つの味わいが楽しめる日本酒として、たいへん人気があります。

【番外編】夢一献

福岡県の酒造用一般米・夢一献は、北陸160号と夢つくしを交配させて誕生した品種です。生粋の福岡生まれの福岡育ちですので、福岡県限定の地酒造りにたいへん貢献しております。酒造用一般米ではありますが、酒造適性が非常に高いため、よく日本酒造りに用いられており、若い世代の方や女性向けの飲みやすいソフトな清酒を造る際に用いられています。
日本酒に興味はあるけど、なかなか手が出せないという方は夢一献を使用した日本酒から挑戦してみてはいかがでしょうか。

西海134号

1971年に九州農業試験場にて西海71号(シラヌイ)と山田錦を交配させて誕生した品種です。西海134号には姉妹品種の西海135号も存在しており、耐倒伏性は非常に高く、栽培もしやすいので人気があります。西海134号は、粒も心白も大きく、タンパク質の含有量が高いので酒造適性は低いという欠点があります。福岡県にある社の蔵では独自に西海134号を育成し、大地の輝という名で醸造を行っています。

西海134号を100%使用した日本酒を飲みたい方は、天山酒造の「地酒天山(竹皮包み)」がオススメです。地酒天山は特別純米酒原酒のお酒で、佐賀県産の西海134号を60%まで磨き上げ、日本酒の香り高い濃醇で高級感溢れるまろやかな香りと味わいを有しており、世界の流行の発信源と言われるアメリカ・ニューヨーク州をはじめ世界各国から絶大な人気を誇っている清酒です。また、竹の皮で手巻きされた独創的なパッケージも地酒天山の魅力の1つとなっています。

さがの華

さがの華とは、若水と山田錦を交配させて誕生した佐賀県オリジナルの酒造好適米です。
佐賀県では、耐倒伏性の低い山田錦と酒造適性の低い西海134号に取って代わる品種の酒米を目標にし、日夜開発に取り組んでいました。そして、遂に山田錦よりも耐倒伏性が高く、粒のサイズが大きくて心白の発現率の高いさがの華という種類の酒米が完成したのです。しかし、さがの華は心白が大きいため高精白の際、割れてしまう場合があります。

さがの華を100%使用した日本酒を購入したい方は、窓乃梅酒造の「純米吟醸 窓乃梅」がオススメです。さがの華を55%まで磨き上げた純米吟醸は、エレガントな吟醸香とキレのある深い味わいを持っており、旨味が口の中いっぱいに広がる絶妙な美味しさを持った日本酒となっています。窓乃梅酒造では、現在も昔ながらの木桶仕込を行っており、伝統の味を今もなお守っている酒造メーカーですので、日本酒をこよなく愛する方は1度購入してみてはいかがでしょうか。

はなかぐら

稲作に不向きなシラス台地の土壌を有する宮崎県では珍しい宮崎県オリジナルの酒造好適米「はなかぐら」が生産されています。
はなかぐらは南海113号と山田錦の交配種です。はなかぐらは、強稈の南海113号の特性と山田錦の千粒量・心白のサイズをしっかり受け継いでいます。しかし、心白の発現率が若干低く、反対にタンパク質の含有量が高いという特徴を有しています。

はなかぐらを100%使用した日本酒を嗜みたいという方は、千徳酒造の「特別本醸造 はなかぐら」です。宮崎県では日本酒よりもその他の蒸留酒の方が需要の高い傾向にあるため、日本酒専門の蔵元は千徳酒造しかございません。はなかぐらを60%まで磨き上げ、低温でゆっくりと醸しているので、淡麗な辛口タイプの清酒となっています。そのため、爽快感のある後味とキレのある喉越しとなっています。特別本醸造のため、吟醸酒に近い香りや味わいが愉しめるので、是非1度飲んでみてはいかがでしょうか。

【番外編】ちほのまい

現在、宮崎県では山田錦の好敵手になるであろう優良品種の酒造好適米の開発に成功しました。その名も「ちほのまい」です。甘口よりのまろやかな味わいが特徴の酒米で、山田錦よりも茎が太く、強風に吹かれても耐えうる強靭な耐倒伏性を有しています。
ちほのまいは、心白の出現率が高く、酒造適性が高いため今最も注目を集めている品種です。
まだまだ3ヘクタールの作付けを目指している段階ですので、今後の展開に期待が高まっています。

九州地方で生産されている酒造好適米を幾つかご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。ここではご紹介しておりませんが、泡盛が有名な沖縄県でもレイホウと呼ばれる酒造用一般米を用いた日本酒造りが行われており、泰石酒造の「黎明 純米吟醸」などが醸されています。また、神奈川県の海老名市では「どんとこい」と「五百万石」を交配させて誕生した楽風舞という新たな酒造好適米が誕生し、日本各地でどんどん新しい日本酒が誕生しています。

この機会に酒米に触れ、全国各地の日本酒の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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