北海道の酒造好適米

北海道地方の酒造好適米をご紹介

日本の最北端に位置し、宗谷海峡を隔てて樺太に対する1大島である北海道には、世界でも有数の漁場として有名な土地です。
北海道といえば、2014年9月から2015年3月まで放送していたNHK朝の連続小説ドラマ「マッサン」の舞台として、竹鶴政孝氏とその妻リタの物語は多くの日本国民を虜にしました。

北海道には、酒造りに必要不可欠な美しい水と広大な土地、そして冬になると乾燥した空気と深々と降り続く雪によって、気候の差が激しくなるため、非常に酒造りに適した土地のため、現在でも数多くの酒蔵が存在します。

北海道の酒造りは、渡島半島にある江差(えさし)・松前・函館を中心に江戸時代の頃から盛んに行われているのですが、酒造りに適した風土を持っていても原材料となるお米が育ちにくい環境のため、当時は日本酒の生産量が極めて少なく、道民のほとんどが本土で醸造された日本酒を飲んでいたと言います。

明治5年頃になると北海道を開拓するために多くの人々が本土から訪れ、その中の1人柴田與次右衛門氏によって札幌市の創成川沿いに造り酒屋を開拓します。その後、開拓者の増加と日本酒の需要が上昇し、明治35年頃になると北海道内には、およそ200近い酒蔵が誕生し、大正12年頃には安定して日本酒が製造できるようになり、その結果道内での日本酒消費量がなんと9割を占めるようになったのです。

そんな北海道では、日本酒造りに適した酒造好適米と呼ばれる酒米が3種類生産されています。今回はこの3種類の酒造好適米の品種や特徴などと共に、これらの酒米が使用されている日本酒をピックアップしてご紹介したいと思います。

北海道で生産されている酒造好適米

2015年現在、北海道で生産されている酒造好適米は「吟風(ぎんぷう)」「彗星」「きたしずく」の3銘柄となっています。
では、それぞれの特徴や使用されている日本酒銘柄をご紹介したいと思います。

吟風

吟風とは、八反錦2号と上育404号を交配させた際に偶然誕生した雑種にきらら397を交配させた酒米です。2000年に品種登録された比較的新しい酒造好適米です。
元々北海道では「初雫」と呼ばれる酒造好適米を用いて日本酒を醸造していたのですが、初雫にはお米の中心部にあるはずの心白が無く、丸みや柔らかさに欠ける味わいの日本酒となります。一方、吟風はきらら397と比べて米粒のサイズが大きく、肉厚であり、さらにお米の中央部にははっきりと心白を確認することが出来ます。
吟風は、他の酒造好適米よりも心白が大きく、さらに稲熱病に耐性があるのが特徴です。しかし、開花期の耐冷性が非常に弱いという欠点もあります。

吟風100%使用した日本酒を飲みたい方は、北の誉酒造株式会社「純米原酒 侍(ブルーボトル)」がオススメです。北海道産の酒造好適米吟風を60%まで磨き上げ、古くから伝わる製法で醸造されているため、米の持つ旨味とコクを最大限引き出し、さらに原酒ならではのガツンとくる力強い味わいが直接的に感じることが出来ます。香り高くて喉にグッとくる辛口タイプですので、ロックにライムを絞った「サムライロック」にして飲むと良いでしょう。

彗星

彗星とは、空育酒170号と呼ばれており、吟風同様、肉厚なうえに米粒が大きく、タンパク質の含有率が低いのが特徴です。しかし、栽培された際の気候や地域によって心白が増減するという性質を持っています。また吟風に比べるとやや心白の発現が弱い傾向にあります。吟風同様開花期の耐冷性が非常に弱いので注意が必要です。
彗星は、北海道初の酒造好適米である初雫が育ちにくい低たんぱく質米安定生産が可能な土地でも栽培することが出来るため、吟風やきらら397の一部を彗星に置き換えて栽培されています。

彗星を100%使用した日本酒が飲みたい方は、高砂酒造株式会社の「純米大吟醸 国士無双 北海道限定」がオススメです。北海道産の酒造好適米である彗星を100%使用しており、尚且つ精米歩合45%ですので、彗星本来の旨味やコクを感じることが出来ます。また、仕込み水に大雪山系の伏流水を使用してるので、身体の底から北海道の大自然を感じることが出来ます。
ですが、純米大吟醸 国士無双は北海道限定のため、なかなか購入することが出来ません。そこでもう1本ご紹介させて頂きます。
彗星を100%使用した田中酒造株式会社の「大吟醸 彗星」もオススメです。彗星の持つエレガントな香りと香り高く優雅な旨味を感じることが出来ます。穏やかな口当たりにも関わらず、端麗な辛口タイプの日本酒ですので、是非1度お試しください。

きたしずく

今まで北海道の酒造好適米といえば、吟風と彗星の2大酒米が主流だったのですが、2014年6月に第3の酒造好適米が誕生しました。それが「きたしずく」です。
今まで北海道の酒造好適米には、道内の酒造メーカーから溶け具合・蛋白・着色度合・供給の安定性・千粒量・心白の6項目を改善してほしいという意見が多数寄せられており、より高品質の酒米の開発を求められてきました。そして長年の研究成果の結果、ついに誕生したのが、きたしずくです。
きたしずくの特徴は、吟風や彗星とは違った味わいが楽しめること、玄米や心白のサイズが大きくて醸造しやすいこと、耐冷性が高くて生産量も増加するという3大メリットがあります。しかし、吟風や彗星に比べて稲熱病にかかりやすいため、農家の方は気を付ける必要があります。
期待の新星きたしずくを使用した日本酒は、脳準で甘みの強い吟風と淡麗で辛口な彗星の丁度真ん中に位置する香りと味わい持つ北海道では非常に珍しいお酒です。

きたしずくを100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は、金滴酒造株式会社の「金滴北雫 純米吟醸【限定】」がオススメです。2014年6月に酒造好適米の正式な認定を受けたきたしずくを精米歩合50%で醸造しています。彗星よりもやや硬めに蒸し上がるため、彗星よりも深い味わいを持ち、吟風よりも綺のように麗しい酒質となります。

また、程よい味ノリタイプの原酒を嗜みたいという方は、二世古酒造の「二世古 特別純米原酒 きたしずく」がオススメです。心白率が高く、溶けやすい性質を持つ きたしずくを精米歩合60%で醸造した日本酒は控えめながらも、ミントや青リンゴのような爽快感溢れるフレッシュな香りと味わいを持つお酒となっています。

今回は北海道地方の酒造好適米の特徴やその酒米を使用した日本酒をご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。今後北海道の日本酒は更なる発展を遂げることと思いますので、この機会に1度北海道のスッキリとした喉越しを持つ日本酒を嗜んでみてはいかがでしょうか。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする