東海地方の酒造好適米【三重県】
東海地方の1つである三重県は、海や山に囲まれた自然豊かな風土を有しており、古くから農業や漁業が盛んに行われています。
三重県といえば、皆さんご存知の「伊勢神宮」を擁する県として知られており、20年毎に社殿を造りかえる式年遷宮制を遺しております。
また、飛鳥及び奈良時代から行われている鮑玉や昭和時代から始まった阿古屋貝の養殖による真珠の生産、松坂市や伊賀地方、鳥羽市で大切に育成されているブランド牛、静岡県や鹿児島県に次ぐ緑茶生産量全国3位と農業や漁業に力が入っており、特にお米作りは鈴鹿川や櫛田川などが貫流する伊勢平野を抱えているため、水稲・うるち米の生産や日本酒造りに欠かせない酒造好適米の生産も盛んに行われています。
三重県で生産されている酒造好適米は、伊勢錦・神の穂・五百万石・山田錦・弓形穂の5種類存在し、中でも三重県オリジナル酒造好適米の伊勢錦や神の穂、弓形穂を用いた日本酒は三重県のお土産品としてたいへん人気があります。
では、伊勢錦や神の穂、弓形穂とはいったいどのような特徴を持つ品種の酒米なのでしょうか。
三重県の酒米4種
伊勢錦
伊勢錦は1849年に多気郡勢和村の朝柄に住んでいた岡山友清氏が在来品種の酒米である「大和」に品種改良を行い1860年に誕生した酒造好適米です。その後、お伊勢参りの参宮街道の頒布所にて無料配布されたことにより、日本各地に広まったと言われています。
伊勢錦を使用して醸造を行った日本酒は香り高い味わいを演出することが出来ると瞬く間に評判となり、近畿圏では積極的に生産が行われていたのですが、戦時中の米不足や耐倒性の低さから徐々に歴史の影へと消え去り、昭和25年には一切生産されなくなり、幻の酒米と呼ばれるようになります。
その後、1軒の酒造メーカーがたった一握りの籾種から、3年もの年月をかけて遂に復活させることに成功しました。
伊勢錦を100%使用した日本酒を是非飲んでみたいという方は、元坂酒造の「酒米伊勢錦 醸ス酒屋八兵衛 純米大吟醸酒」がオススメです。この日本酒は、美しく澄んだ曇りの無い味わいと芳醇な日本酒の香りが漂い、古の伊勢を感じさせてくれる清酒です。
伊勢錦は三重大学の研究チームによって、山田錦と出穂時期や栽培形態がほぼ同じであり、心白の入り方も酷似していることが明らかにされました。ですが、伊勢錦を醸造すると、山田錦よりも淡麗で爽快感のある味わいを持つ特徴的な日本酒となります。
神の穂
三重県にある伊賀農業研究室では、新たな酒造好適米の開発を行っていました。そして、遂に平成19年の10月に農林水産省へ品種登録出願申請を行い、平成22年の8月に見事品種登録を果たしました。
神の穂は、三重県内に存在する酒造メーカーから、栽培がしやすくて美味しい日本酒が醸造出来る種類の酒造好適米の開発してほしいという要望を受け、試行錯誤の末に誕生した品種です。神の穂は越南165号と夢山水の交配品種であり、耐倒性に優れており、尚且つ生産量が多いため、人気の高い酒米となっています。
神の穂を100%味わいたいという方は、若戎酒造の「PREMIUM 純米吟醸 義左衛門 神の穂」がオススメです。神の國で生まれ育った神の穂を100%使用した日本酒はしっかりとした旨味が感じられるにも関わらず、優しくて穏やかな味わいを持っているため、1度飲んだら癖になります。日本酒の芳醇な香りが漂い、清々しく快い味わいを有しているため、鮎の塩焼きや夏野菜をたっぷり使用したラタトュイユなど素材の味を生かした料理と相性抜群です!
【番外編】うこん錦
うこん錦は酒造用一般米として知られる酒米ですので、酒造好適米ではありませんが、古くから三重県の西部にある伊賀地方を中心に生産が行われている古い種類のお米です。米粒のサイズが大きいので、昔は醸造用に生産が行われていたそうです。ですが、現在は優秀な酒造好適米に押され、酒造用の掛け米として用いられることが多くなりました。
しかし、コシヒカリやササニシキなど優秀な飯用一般米に押されてしまい、今では生産量が激減しているお米です。しかし、酒造用の掛け米としては優秀のため、今でもうこん錦を使用している酒造メーカーも存在します。
うこん錦の使用されたお酒を飲んでみたい方は、大田酒造の「特別純米酒 半蔵 伊賀酸うこん錦」や2013年みえセレクションに選ばれた「伊賀流忍者麦酒」がオススメです。
特に大田酒造の「特別純米酒 半蔵 伊賀酸うこん錦」は、農家の方や蔵子たちが愛情をたっぷり注いで作られているため、柔らかな舌触りと後味の良いまろらかな味わいを持つ清酒となっています。伊賀地方リジナルの日本酒ですので、この機会に是非1度味わってみてはいかがでしょうか。
弓形穂
弓形穂は三重県オリジナルの酒造好適米です。読み方は「ゆみなりほ」と言い、長い歳月をかけて伊勢錦の中から短稈へと突然変異した種類の酒米を三重大学に調査してもらったところ、新しい品種であることが明らかとなり、2011年に新品種として認定された酒造好適米です。伊勢錦とは兄弟品種となるため、生産量は伊勢錦とほぼ同じです。心白はライン状に大きく発現するのですが、発現率が30%と低く、醸造適性は山田錦と同等となっています。
弓形穂を100%味わってみたいという方は、河武醸造の「鉾杉 純米吟醸 弓形穂しずく」がオススメです。弓形穂の柔らかく優しい香りと角の無い円やかな味わい、そしてキリッとした後味が堪能できる日本酒です。生詰ですので、初々しいフレッシュさと清々しいスッキリした味わいを持っています。もっと弓形穂を感じたいという方はぬる燗にして召し上がると、口の中に柔らかな風味が一気に広がるので、是非お試しください。
今回は東海地方の三重県オリジナルの酒造好適米を3つご紹介させて頂きました。
東海地方の日本酒に興味のある方は、東海地方の地酒を手に取って飲み比べてみてはいかがでしょうか。