関西地方の酒造好適米【兵庫県 その4】
いよいよ関西地方で最もオリジナルの酒造好適米を誕生させている兵庫県も残り2種類となりました。
兵庫県の酒米出荷量は平成20年度でおよそ20,400トンであり、これは日本国内の酒米生産量のおよそ30%を占めています。特に兵庫県のオリジナル酒造好適米である山田錦の生産量は全国シェアNo.1を誇っており、北は北海道、南は熊本県まで600社を超える酒造メーカーから愛用されています。また、兵庫県産の酒米は米粒が大きくて高品質なものが多いため、良質な日本酒が造れるということで、日本一の酒処として日本国内だけではなく、世界でも注目されています。
そんな兵庫県では20種類前後の酒造好適米が生産されており、今回はそのうちの2種類をご紹介したいと思います。
兵庫県の酒米2種+番外編
渡舟2号・短稈渡舟
渡舟2号とは、渡舟が純系淘汰され、育種などによって人為的に淘汰された品種です。渡舟2号は短稈渡舟と同様の特徴を有しており、雄町に近い性質を持っています。しかし、心白は雄町とほぼ同じサイズにもかかわらず、発現率が低いと言われています。
短稈渡舟は山田錦の父にあたる品種であり、明治の終わりから昭和の初めにかけて盛んに生産されていた酒米ですが、今から半世紀以上前にぱたりと姿を消しました。短稈渡舟の正式名称は渡舟2号であり、同様の特徴を有しているのも頷けます。姿を消していた渡舟2号ですが、三和酒造が滋賀県の農業試験場に残っていた短稈渡舟の籾種を譲り受け、契約農家の方々に生産を依頼したのです。そして3年の歳月を経て、見事渡舟2号が復活を果たしたのです。
渡舟2号・短稈渡船を100%味わいたいという方は、三和酒造の「臥龍梅 純米大吟醸 短稈渡舟 無濾過生貯蔵原酒」がオススメです。短稈渡舟を50%まで磨き上げ、山田錦や五百万石などとは違い、独特な酸味から感じる深いコクが特徴です。短稈渡舟を飲んだ人は顔の筋肉が緩み、自然と笑顔になると言われており、別名「幸せの酒」と呼ばれています。三和酒造で使用されている短稈渡舟は滋賀県産のものですが、渡舟2号ではありませんが、兵庫県産の渡船を嗜んでみたい方は、来福酒造の「来福 夏の酒 純米吟醸 生貯蔵酒」がオススメです。シャクナゲの花酵母を使用しているので、穏やかな香りと共に渡舟の甘みがふわっと口の中に広まり、夏らしい酸味が感じられる清酒となっています。
【番外編】兵系酒十八号
兵庫県の幻の酒造好適米として知られる兵系酒十八号は山田錦の系譜らしいのですが、詳しいことはあまり知られていないマイナーな酒米です。
兵系酒十八号を100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は、来福酒造の「来福 ひやおろし 純米吟醸」がお勧めです。向日葵花酵母を使用しており、夏らしい清酒となっています。清々しい爽やかな酸味と旨味が口に広がり、安らかな舌触りを持ちながらもキリッとしたキレ味が特徴の日本酒となっています。
辨慶
かつて盛んに生産されていた酒造好適米の辨慶ですが、続々と誕生する優秀な酒造好適米によって生産量が徐々に減少し、歴史の影へと消えてしまった酒米です。
山田錦が登場する以前は兵庫県を中心に生産が行われており、当時は山田穂と共に2大酒米として人気を集めていました。辨慶は、辨慶1045という種類の酒米を純系淘汰して誕生した品種であることが明らかとなり、さらに辨慶を純系分離させたものを弁慶116と呼ぶそうです。しかし、弁慶116の後は神力系の酒米と交配させたりと研究が行われたのですが、どれも不発に終わり、終戦後には、ぱたりと姿を消してしまいました。
辨慶は現在地元である兵庫県で復活を果たすべく、様々な方々の知恵と技術を結集して生産が行われています。復活したての収穫量はたったの3トンでしたが、農産物検査の結果は100%の特級だったため、新しいお米を醸造するのを得意とする酒田酒造の手によって復活米の辨慶を100%使用した純米大吟醸が誕生しました。その翌年は西田酒造が加わりました。今では日本酒好きの方ならば辨慶を知らない方はいらっしゃいません。
辨慶を100%使用した日本酒を飲んでみたいという方は、酒田酒造の「上喜元 純米大吟醸 辨慶」や西田酒造の「田酒 純米吟醸 辨慶100%」がオススメです。辨慶は大粒で心白の発現率が高かったため酒造適性は高いので、源義経に仕えて武名を上げた武蔵坊弁慶のように力強い味わいとスッキリとした清涼感溢れる喉越しで注目を集めています。
是非1度辨慶が使用された日本酒を飲んでみてはいかがでしょうか。
今回で関東地方の兵庫県で生産されている酒造好適米のご紹介が終了します。
酒処として知られる兵庫県だからこそ、ここまで様々な酒造好適米が誕生するのでしょう。これからも続々と素晴らしい酒造好適米が誕生するかと思いますので、兵庫県からは目が離せません!