信越地方の酒造好適米をご紹介
信越地方とは、長野県と新潟県の2県の総称です。稀に、富山県・石川県・福井県の3県と合わせて北信越地方または北陸信越地方とも呼ばれます。
新潟県は皆さんもご存知の通り、米処として有名な土地です。そんな新潟県では日本屈指の清酒生産量を誇っており、良質な酒米と清水で醸造される酒は、まさに逸品です。さらに毎年訪れる寒さの厳しい冬と越後杜氏たちの優れた技術と豊かな知識によって淡麗な清酒が誕生します。
長野県はあまり知られていませんが、日本でも有数の日本酒蔵元を誇っており、日本酒ファンの間では「地酒王国」という愛称で親しまれています。長野県は新潟県同様、寒さの厳しい冬が毎年やってくるため、日本酒造りに適した風土を有しています。
そんな日本酒大国と呼ばれる信越地方の2つの県には、オリジナルの酒造好適米も数多く存在します。
そこで、今回は新潟県と長野県の酒造好適米の種類や品種、特徴をご紹介したいと思います。
信越地方の酒造好適米をご紹介【新潟県】
では、まずは米処と呼ばれる新潟県で生産されている酒造好適米からご紹介します。
新潟県では以下の酒米が栽培されています。
新潟県
五百万石・一本〆・雄町・菊水・越神楽・越淡麗・たかね錦・八反錦2号・北陸12号・山田錦(合計10種類)
新潟県は兵庫県と並ぶ米の産地ですので、やはり数多くの酒造好適米が生産されています。山田錦や五百万石といったメジャーなものから、一本〆や越淡麗などオリジナルの酒米も存在します。
今回は、メジャーな酒米ではなく、マイナーな酒米をご紹介したいと思います。
越神楽
1996年に北陸農業試験場(現在の中央農業総合研究センター・北陸研究センター)にて、山田錦と北陸174号を交配させて誕生したのが「越神楽」です。山田錦よりもやや小さめの粒ですが、整粒歩合は山田錦に近くなっています。越神楽は45%まで磨き上げた際に粉砕する確率が毎年異なるため、少々不安定な一面を持っていますが、それでも山田錦と同等もしくは若干少ない程度と言われています。越神楽を使用した日本酒は、「しっかりした味わいと深みのある柔らかさが感じられる」「繊細で美しい」といった意見が多く、山田錦とは異なるため、醸造の幅が広がったと言われ、高評価を得ています。
越神楽を100%使用した日本酒を嗜みたいという方は、原酒造株式会社の「越の誉 純米しぼりたて原酒」がオススメです。新潟県オリジナルの酒造好適米「越神楽」を100%使用したこの日本酒は、滑らかな舌触りと香り高い香気が漂う原酒らしからぬ逸品です。キレの良さとフレッシュさを感じられる新潟県らしい日本酒ですのでこの機会に是非1度お試しになってみてはいかがでしょうか。
越淡麗
2004年に酒米生産量のトップ争いを繰り広げている山田錦と五百万石の交配によって誕生した「越淡麗」は、新潟県オリジナル品種です。
米処の新潟県ですが、実は兵庫県のオリジナル酒造好適米である山田錦の栽培は上越市以北では行うことが出来ず、日本酒品評会の際は兵庫県で生産されている山田錦を使用せざるお得ませんでした。そこで、新潟県でも山田錦並み、いやそれ以上の米質を持った酒造好適米を誕生させるために、16年近い歳月をかけて遂に完成したのが「越淡麗」です。越淡麗は山田錦を上回る酒造適性を有し、五百万石の頑丈さを持ち合わせた優良種であり、コシヒカリ並みの生産量を持つため、現在じわじわと注目を集める酒造好適米です。
越淡麗を100%使用した日本酒を味わってみたい方は、弥彦酒造の「越乃白雪 特別純米酒」がオススメです。弥彦山の伏流水を仕込み水に使用し、弥彦村で生産された越淡麗を100%使用し、なんと精米歩合50%まで磨き上げた日本酒は、けばけばしい香りや余計な雑味が一切感じられず、洗練された軽やかで優雅な舌触りとさらりとした滑らかな喉越しを感じることが出来ます。純米酒ならではのお米の旨味や甘みを味わうことができ、ほんのりと感じられる程よい酸味がアクセントとなって3つを絶妙に融合してくれます。優しくて柔らかな越乃白雪を是非身体の底から味わって頂きたいと思います。
一本〆
五百万石といえば、美味い日本酒を醸造することが出来る酒造好適米として、「酒米の王」と称される山田錦とトップ争いを繰り広げていますが、生育過程では稲が倒れやすく、醸造工程では精米歩合が高いと粉砕しやすいという欠点が2つ挙げられています。
この2つの欠点を克服するために開発されたのが「一本〆」という酒造好適米です。一本〆は五百万石と豊盃の交配品種であり、優れた耐冷性を有しており、精米歩合が高くても粉砕しにくいという特徴を持っています。しかし、一本〆が広く栽培されるようになると、耐倒性及び耐冷性に優れていたため、新潟県内で栽培しやすいということもあり、肥料などを多用し、低品質の一本〆が大量に市場に出回るようになったため、現在では厳重な規則を設け、その規則を守れる農家でしか栽培することが許されておらず、生産量は極めて少なくなっています。
一本〆を100%使用した日本酒を堪能してみたい方は、髙千代酒造の「純米大吟醸 一本〆 無調整生原酒」がオススメです。魚沼産100%の一本〆を精米歩合48%で醸造した純米大吟醸酒は深い味わいと余韻が感じられる柔らかく豊かな香りが印象的な清酒です。無濾過生原酒のため、お米本来の旨味や甘みを思う存分堪能することが可能です。
雄町
山田錦と並ぶ酒造適性を持つと言われる「雄町」は、備前国(現在の岡山県南東部)の上道郡雄町村の岸本勘造氏という篤農家が江戸時代の終わりに発見した幻の酒米です。
ある日、岸本勘造氏が大仙参拝の帰りにふと目に飛び込んできた2本の丈の長い穂を摘み取り、自宅に持ち帰ったのです。そして、選抜に選抜を重ね、遂に新しい酒米「雄町」が誕生したのです。
現在日本国内で栽培が行われている酒造好適米は全てこの雄町が起源とされており、100年以上たった今でも一切混血されていない酒米であることから「幻の酒米」と呼ばれています。
明治時代には最優良品種という称号を与えられ、これがきっかけとなり、今では日本各地で栽培が行われるようになりました。
岡山県オリジナル酒造好適米ですが、新潟県でも栽培が行われており、米処である新潟県産の雄町100%使用した日本酒を味わってみたいという方は、美の川酒造の「美の皮 越の雄町 大吟醸」がオススメです。米作りからこだわった新潟県産の雄町を精米歩合40%で醸した大吟醸酒は、雄町の魅力を最大限引き出した日本酒となっています。
優雅で清々しく快い含みのある香りとまろらかで柔らかな舌触り、そしてするりとした喉越しはまさに逸品です。キリッとした辛口の日本酒が多い新潟県らしからぬ日本酒として清酒ファンの間では話題となっています。
今回は新潟県で生産されている4種類の酒造好適米をご紹介させて頂きました。次回は菊水・八反錦2号・たかね錦の3種類をご紹介したいと思います